北陸大学教職員組合ニュース26号(1996.9.2 発行) 

 

学長とは何か−久野学長,三たび答えず

 北陸大学教職員組合は,久野学長に対し,7月24日付け回答期限で「自己点検・自己評価」について質問しました(「組合ニュース」21号)。これは,教育職員の昇任人事及び人事考課(6月5日),学生監禁事件?(6月20日)に続く,久野学長に対する三回目の質問でした。残念ながら今回も,前回同様に回答を頂くことができませんでした。
 改めて言うまでもなく,「学長」はたとえ現実の規程がどうあろうと,それ自体,人間の文化史の中に厳粛な歴史を持った存在であり,それゆえにこそ尊敬され,その発言は社会的にも重みを持ち,最高学府「大学」の精神的中心として「大学」の誇りを体現するものであります。同時に現実の大学の教育・研究に対して責任を負わねばならない存在であり,この責任は決して規程上の任命権者に対するだけのものではありえません。しかし,この大学では,教職員が切実なものとして重視している大学の基本問題について,久野学長は自ら何を考えているのか,現実にどのように指導性を発揮していくのか,残念ながら我々には全く見えません。基本問題を不合理なままに放置している学長とはいかなる存在なのか,精神的中心がぼやけている大学とは何なのか,問わざるを得ません。
 もともと大学における昇任や,教育・研究そのもの及び自らの活動に対する自己点検・自己評価の問題は労使関係の問題ではありません。しかしながら,本学において,それが労使関係の問題につながっていかざるを得ないのは,そういった問題で久野学長が教学の長としての自己責任のもとにイニシアティブをとろうとしないからです。
 今回,教職員組合が質問した自己点検・自己評価は,新しい大学設置基準の中で,特に「大綱化」の歯止めとして設けられた重要な項目です。例えば,この大学でも昨年度実施された授業評価は,そのような自己点検・自己評価の一つですが,今年度前期には何の説明もなく実施されなかったことからも分かるように,とても実施目的,実施体制,実施方法等に関して長期的な展望を持って綿密に計画されたものには見えません。この種の評価は,目的と計画に対する授業担当者の理解と協力無しには,最悪の場合,授業の現場に混乱と無気力をもたらすだけになってしまうことが危惧されます。新設置基準の基になった大学審議会の答申は,大学教育の「形骸化」の認識から始まっていますが,このままでは我々は「形骸化」に歯止めを掛けるどころか,拡大再生産しているだけではないでしょうか。
 重ねて言います。「学長」や「学部長」の真の意味での指導性は規程がどうのという問題ではなく,「大学」の伝統というものです。それなしには,学長職,学部長職,教授会ひいては大学そのものが形骸化してしまいます。そこで行われる教育も学問の精神を欠いたものになってしまいます。我々は学長の真剣な取り組みに対しては,何事であれ,決して協力を惜しむものではありません。私立大学の学長の立場の難しさを理解しないわけではありませんが,久野学長が我々の大学の基本問題について,自らの信念に基づいて我々に語ろうとはしないことはとても残念なことです。

学生監禁事件問題久野学長ヘ再質問!

この問題に関する先の理事長見解で,雑誌記事が事実であったことが判明しましたので,改めて久野学長に以下のごとく質問書を提出しました。

平成8年9月2日
北陸大学学長 久野栄進殿                        

北陸大学教職員組合

質 問 書 

 学生監禁事件問題に対し、以前(6月20日)、久野学長に質問書を提出させていただきましたが、未だにご回答をいただいておりません。私共の業務である学生教育指導上で重大なこの問題について、久野学長のご教示がないことで、私共は如何に理解したらよいのか困惑しております。さて、8月28日、理事長名で、この件に関する見解が以下のように示されました。

 4. 学生の逮捕・監禁に関する記事は、2年近く前に発生した、不許可ビラを配布していた学生に対する補導を題材にしていると思われ、本件に関しては当時あらゆる面で、既に決着のついていることであります。  (抜粋)
 今更申し上げるまでもないことですが、大学(学長以下)は自治を持った1つの組織てあり、社会的に責任ある公教育を担っております。学生の補導は教育の一環としてなされるべきもので、学内で学生(達)が、たとえ犯罪につながる行為をしたとしても、余程のことがない限り警察権力を学内に導入しないのは、教育上の配慮からであり、大学がそれに対処しうる能力と責任を有しているからであります。しかるにこの事件が、理事長が述べているような学生補導であったとしますと、責任能力のない法人がそれを担当し、しかも監禁という違法行為と教育妨害(授業を受けさせなかった。受講中に連行した。)を行ったことは、大学に対する法人の重大なルール違反であると考えられます。大学の最高責任者である久野学長に再度質問させていただきます。

1. 久野学長は、学生補導上の問題になぜご対処されなかったのですか。
2. 久野学長は、法人の行為を阻止なさらず、なぜ黙認されたのですか。
3. 法人の行為の結果に対して久野学長はどのようにご判断されていますか。
4. 大学の自治、教育の主体性に対する久野学長のご見解をおたずねします。
 以上について、平成8年9月17日までにぜひ文書にてご回答くださいますようお願いいたします。なお、この質問書並びにご回答は公開として組合ニュースに掲載させていただきます。