北陸大学在学生・ご父母の皆様へ
余寒なお厳しい折りでありますが、皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。日頃は本学の教育に対し格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。
さて、一月半ばから本学の学生有志諸君が現下のキャンパスの諸問題の改善を求めて署名活動を行い、二月十九日に六八一名の名前を連ねて、本学北元理事長の退陣要求を含む改善要求書を町村文部大臣と本学理事長へ提出しました。このことがマスコミに大きく取り上げられ、皆様の中には既にお聞き及びの方もおられると存じます。私たち教職員は、このような事態になるのではないかと心配いたしておりましたが、現実に学生諸君が立ち上がったことに少なからず驚きとショックを感じております。
昨年、皆様に不躾ながらお手紙やニュースを差し上げ、若干お伝えいたしましたが、北元喜朗氏が理事長に就任した数年前から、本学の教育・研究環境が著しく悪化したことは広く内外の認めるところです。私たち教職員組合では、教育の現場に身を置く者としてその責任を全うするため、あらゆる機会を捉えて教育環境の改善を求めてまいりました。その間、昨年は文部省から二度にわたる異例の行政指導が本学法人に対してなされ、北陸大学の正常化が緊急かつ不可欠な事項として要請されました。これを受けた本学理事会は改善に向けて具体的な策を講じるものと期待いたしましたが、残念ながら今日まで何一つ改まるものはありませんでした。教員の意にそぐわない学長や学部長を独断で選任したままはや一年が経とうとしていますのに、理事会は行政指導に従って新たな学長・学部長を選び直すこともせず、学生無視、教員不在の学園運営が続いているのが現状です。
こうした中、これまでも度々現状不安を表現したビラが学生諸君によって配布されていたことは気づいておりましたが、七百名近い学生が自らの署名をもって訴えるという今回の行動を見るにつけ、私たち教職員は、彼らが本学に寄せる思いと期待の大きさを知るとともに、自らの力不足をあらためて痛感し、学生ならびにご父母の皆様に大変申し訳けなく思っております。加えて、学生諸君が安心して勉学に専念できるキャンパスの平和の回復こそ、最大の急務であると再認識いたしました。
学生諸君が今回、署名運動と文部大臣への要求書の提出、そして市民へ訴えるべく記者会見を行いましたが、この行為を法人理事らは乱暴な行動としてとらえ、事前に話し合う機会があったのにと評しています。正常な感覚の大学なら学生達も当然そのようにしたと思いますが、数年前にビラを配布した一学生に、七時間半にも及ぶ監禁が法人当局によって行われたことが知れ渡っており、最近でもいかめしい服装の警備員が常に学内を巡回し、講義中の教室にまで入ってくる状況があり、事前に法人側と話し合える状況ではなかったという学生諸君の言い分はもっともなことであると、私たちは考えています。学長や学部長も教学側に立たず、法人と一体であることは衆知のことで、誰に訴えればよいのか戸惑ったことだろうと思っています。
今日現在、私たちは、まだこの学生諸君と会う機会を得ておりませんし、その主張や要求もまだ詳しくは聞いておりません。ですが、彼らの心中を察し、彼らを最も理解しうるご父母の皆様に、彼らの行動へのご理解をお願いいたします。私たちは、彼らの動機は純粋なものであると確信しております。しかし、残念なことに、法人関係者の周辺では一部の学生の行動として無視しようとする動きが見え隠れしています。彼らの純粋な気持ちをわずかでも歪めることがあってはならないと考え、取り急ぎ内情をお知らせ申し上げた次第であります。
皆々様には、大変ご心配をおかけすることとなり、誠に申し訳けございません。教職員組合の私たちは、向後、大学の正常化に向けて、より一層努力を続ける所存でおりますので、何卒、倍旧のご理解とご指導を賜わりますよう、切にお願い申し上げます。
平成十年二月二十八日
北陸大学教職員組合
執行委員長 櫻田 芳樹(外国語学部教授)
連絡先 九二〇一一八〇 金沢市太陽が丘一の一 北陸大学
岡野 浩史(外国語学部教授)
(電)〇七六 二二九 一一六一 島崎 利夫(法学部教授)
九二〇一一八一 金沢市金川町ホー三 北陸大学薬学部
(電)〇七六 二二九 一一六五 澤西 啓之(薬学部教授)