北陸大学教職員組合ニュース第 140号(1999. 7.29発行)

   

「経理公開」は何のためか?

 

 いよいよ待望の「経理公開」が行われた。しかし、その内容の貧しさには目を覆うばかりである。法人理事会は経理公開が遅れていることについては「本学創立以来のことだから慎重に慎重を期す」と主張していたが、いざ出された数字を見ていると、経営の実態がわからないように慎重を期していたとしか思えない。

 With 15号は今回の「経理公開」は「信頼関係の強化を目的として」行うことを記事の冒頭で謳い、また「財政基盤に対する共通認識のもと、力を合わせ、教育・研究の一層の充実・発展に向け邁進するため」「趣旨を充分にご理解の上、ご協力をお願いする」としている。しかし、それほど重要なものなら、また、仮に Withを使いたいというのなら、そもそも第1面に大きく掲載すべきであろう。ところが、この「経理公開」に関する記事は Withの1面あるいは最後にある裏側のページを見ただけでは、その記事があることすらわからないようになっている。つまり Withを開かないと、この記事の存在には気がつかないのである。

 「信頼関係の強化」を言いながら数字は最低限のものしか出さず、「ご理解、ご協力をお願い」と言いながら教職員に対しては説明会などは一切開かず、 Withの中で一番めだないところに他の多くの記事といっしょにして入れておく。まったく矛盾だらけである。なぜそのような妙な事態になったのか。

 話は簡単である。要するにアリバイ作りである。衆知のように度重なる行政指導により文部省から経理の公開を迫られ、法人は不承不承「平成10年の決算から」と約束せざるを得なかった。もともと経理公開など、法人の望むところではなかった。団交で理事たちはじつにかたくなに経理の公開を拒否してきた。しかし、文部省との約束はある。そこで法人が選んだのがこのやり方である。「公開」はするが、経営実態がわかるような詳細な数字の公表はしない。また、出した数字も極力最小限の人のみが見るようにする。学生、父母に知らせるのなどは論外である。それでも実態はどうであれ「経理公開」を行ったという「事実」だけは残る――すべては文部省に対するアリバイ工作にすぎない。

 もし法人がそうでないと言うなら、もっと詳細な数字を出し、さらに説明会なり何なりを開いて「信頼関係」の構築に努めるのが筋だろう。たとえば、人件費が30億5千万となっているが、そのうち役員報酬はどれぐらいなのか。疑惑の対象となってきたものが明らかにされずに信頼などと言っても、それはたわ言に過ぎない。平成7年度の役員報酬では文部省のガイドラインを越えた者が4人いることを法人理事会は団交で認めている。しかも、そのうち2人は3千万円を大きく越えており、そのため大学は文部省からの助成金を大きく削られた。大学の私物化と非難されても弁解の余地はあるまい。(参考までに言えば石川県選出の国会議員である森喜朗氏の昨年度の収入が2500万円ほどであった。)文部省の行政指導後、今でもなお助成金を削除されるような高額の報酬を法人は理事に対して払っているのだろうか。今回明らかにされた数字からはまったくわからない。

 また、財政状況を理解してもらおうというときには、最低でも前年度の財政状況ぐらいは示すのが筋である。前との関連があってこそこれからの見通しに関する話は説得力を持つ。今年の分だけで、しかも最小限の数字しか示さないで信頼してくれというのは噴飯物である。さらにあきれたことに、今回「公開」された経理状況は学生、父母には知らせないと法人理事会は言明している。いったい、なぜ知らせないのだろうか。ぜひともはっきりした理由を聞きたいものである。

 我が北陸大学の法人理事会にひきかえ、某私立大学では「学園ニュース」なるものの4ページを使って毎年詳細な経理公開を行っている。「学園ニュース」は教職員だけでなく学生、父母、卒業生など広く大学関係者に配布されるものである。公開は単に該当年度の数字を明らかにするだけでなく前年度のと対比して行っているので推移は一目瞭然である。また、項目別に内訳がはっきりと示されており、たとえば、役員報酬の額もわかるようになっている。明瞭極まりない。北陸大学の場合は一切をひっくるめて人件費と書いてあるだけで内訳は一切示されてない。その大学にできることがなぜ北陸大学ではできないのか。疑惑は深まるばかりである。

 大学の運営は信頼関係なしにはありえない。法人理事会は、新たに過去の経理も含めた詳細な数字を示して、自らの経営責任の全うに努めるべきである。大学間のサバイバル競争の激化するなか、アリバイ作りだけでは、大学の危機を乗り切ることなどとうていできない。もっとまじめにやれ――私たちはそう言いたい。

 

   【参考資料】某大学の消費収支計算書

              平成10年

 

 

 

 

 

   (北陸大学)

 

 

 

 

  (注)

@ 某大学では,8,9年度を比較して公表していることが分かります。

A 数字は組合ニュース編集部の方でカットしました。