北陸大学教職員組合ニュース第
125号(1998.9.1発行)
学長・学部長選任問題 新局面に入る!
全教員の理解がなければ、北陸大学の正常化はない
1)臨定(臨時定員措置)問題と行政指導
本学の外国語学部入学生の臨時定員措置(60名分)の平成11年度末までの延長申請は9月末が締め切りである。もし延長できなければ、平成12年度から5年かけて段階的に恒常定員へと削減される。また、外国語学部、法学部(100名分)の臨時定員のうち半数(30名,50名)は、両学部が学部の改組や学科の新設などの新規計画を文部省に申請して認められれば、恒常定員に組み込める。このことで臨定問題を大幅に回避できるのであるが、その申請の締め切りは来年4月末である。北陸大学の発展と健全な経済基盤の維持のためには、ぜひとも臨定問題をクリアしておく必要があろう。
しかしながら、困難な問題が本学にある。それは、現在本学が「文部省の行政指導」下にあり、いかなる申請も認可されない状況にあるからである。よって、この行政指導を早期に終了させることが、まず必要になる。
ところが、本学法人理事会は、行政指導に対する認識が甘く、再度の指導を受けるなどの失態を演じている。最初の指導から1年半、昨年9月の再度の指導からも1年になろうとするのに、いまだに処理しきれないでいる。これでは、とうてい臨定問題を真剣に心配しているとは思えない。
その行政指導は、異例の多項目が示されたが、学内には「教学の意思が反映された大学運営」が最重要であるとの基本認識があり、その第一歩として「学長選任規程」を作り上げることが当面の課題とされていた。昨年10月、文部省から強く言われて実施した中川理事と佐々木学長の説明会は、そのための協議を“正規の機関”である全学教授会で行うことで全教員の了解を得るものであった。そして、全学教授会では法人常任理事会案、教員案の2つの規程案について検討し、さらに学部教授会の意見も聞き、本年2月3日に“正式”に結論を出した。しかし、その正式な「全学教授会案」はなぜかその後放置されたままになった。
もし2月3日の結論を、佐々木学長が全学教授会議長として、これなくして協働関係は確立せず、よって行政指導も終了しないという認識をもって法人理事会を説得していたら、もし法人理事会が教学の意思を真摯に受け止めていたら、今頃は新学長のもとで、大学の将来計画が語られ、臨定問題も改善の方向に向かっていただろう。
法人理事会は、「臨定問題」よりも、教員の多数に支持される「新学長」の方が、北陸大学の発展にマイナスであると判断したようである。北元理事長の「教授会を中心とした教員の意思を反映できる大学運営を目指し、学長選任も含めた正常化になお一層の努力を重ねる方針です」とした昨年の声明(9年2月27日)はやはり欺瞞であったのか。
2)再度の説明会
夏休み前の7月末、学長選任規程等の問題について中川理事と佐々木学長が、再び事情説明を各学部で行った。しかしながら、彼等の説明は前回と変わらず、法人の身勝手な理論の域を一歩も出ていないものであった。
中川理事らは、まず2月3日の件については触れないで欲しいと述べ、こともあろうに“正規の協議機関”と自ら位置付けた全学教授会の議決を“棚上げ”にしたのである。昨年9月の行政指導では、文部省から、「教学サイドの意見を生かすこと」と指導され、その約束の上での全学教授会での協議ではなかったのか。中川理事の口からは、全学教授会の審議や結果を重く受け止めるという言葉は一切なかったし、なぜ「全学教授会案」を無視するのかの説明もなかった。
この説明会での大部分は、2月3日以降の法人の対処について、文部省とのやり取りを含めた経緯であったが、5ヶ月余りの空白を埋めるに足るものではなかった。文部省の「案」に沿って提出したという法人側の「学長選任骨子」や、「学部長選任骨子」は、行政指導の基本認識である“教員の意思を反映させる”という精神にはほど遠いものである。また、文部省から打診されて提出した教員有志側の「改正案」は、独自のものとして起草した案ではなく、あくまでも文部省の指導下での妥協できる線として回答したものである。この教員側の回答にも、法人側は何一つ歩み寄りを示していない。
そして、説明の最後に中川理事は、「2月3日以来再び学内にもどってまいりました」とこともなげに言った。学長選任の議論を棚上げし、法人がつね日ごろ主張している“学内問題を学内で”話し合わず、文部省の“非公式な手段”に委ね、なんら実りのない空白を作ってしまった当事者とも思えない態度である。
3) 全学教授会懇談会
今回の学内での話し合いの場を再び全学教授会に設定し、佐々木学長が再び音頭を取るという。しかも、“内々に”といわれていた内容で話し合えという文部省からの注文であると佐々木氏は説明した。その内容とは、文部省の「案」に基づく法人側の「学長選任骨子」などである。ここにおいて法人側は、2月3日の全学教授会議決の案にとらわれることなく、強引に自分たちの本音の入った規程案(骨子)を正規の機関である全学教授会の懇談会の俎上にのせ得たのである。
このことを文部省が了解したとは俄には信じられない。それは、発端の文部省の「案」なるものは、「気に入らなければ破り捨ててもらってもいいですよ」と言われた代物であり、“2割の得票”も「特に根拠のあるものではない」とされているからだ。
2月3日の学長選任の全学教授会案が無視される理由は何もない。無視して、学長選挙をしなかった北元理事長が自らの言葉で、「なぜ全学教授会案がいけないのか」を明確に説明できなければ、別の案を提案することは道理が通らない。文部省うんぬんは経緯であって、理由の説明ではない。
再び協議に入った全学教授会懇談会は、北陸大学の正常化の原点を離れた議論になるなら、教員たちの支持は得られないであろう。将来に禍根を残すような不合理な選挙規程を作ってはならない。そして、教員の意思が反映されるものでなければ、学長選挙、学部長選挙をする意味がない。