北陸大学教職員組合ニュース109 (1998.3.3発行)

 

拝啓 北元喜朗殿

私たちはなぜ理事長の退陣を要求するのか

  

 北元理事長、私たちは昨年来、あなたの退陣を要求しています。私たちは、なぜあなたに退陣を要求しなければならないのか。それは、あなたが北陸大学の理事長にふさわしい大学運営を行ってこなかったし、今も行っていないからです。

 たとえば、いわゆる「衛藤氏問題」があります。全学教授会において、新しい学長を選挙によって選ぶための話し合いを進めつつあったあのとき、あなたは密かに独断で衛藤氏と次期学長就任の交渉をし、一方的に理事会で選任の決定をし、発表しました。それは教員側から「闇討ち」と言われても抗弁しようのない、信頼を裏切るやり方でした。ところがその半年後には、衛藤氏の承諾を得ぬまま、選任をこれまた一方的に撤回し、当の衛藤氏は北元理事長に対する怒りのコメントを各報道機関に発表し、経緯を明らかにしました。これは大きな社会的事件として報道され、北陸大学の威信は大きく傷つき、学内にも大きな混乱を招きました。しかし、最初から最後までご自分が主導して行った不祥事であるにもかかわらず、北元理事長はこの件に関してはまったく口を閉ざしたままで、もちろん責任も一切お取りになりませんでした。信じ難いことです。

 また、たとえば、文部省に対する虚偽報告があります。北陸大学の歴史上大きな汚点となりました。これに対してあなたは自らの言葉で説明しようとしたことがあったでしょうか。法人の最高責任者である理事長としてあなたは責任を取ったでしょうか。説明はなされず責任も取られませんでした。あるいは、残業手当の件です。過去数年にわたって数千万円にものぼると推測される多額の残業手当が未払いであったのを、組合から何度も追及され、労働基準監督署から勧告を受けてやっと支払いに応じたときに、理事長ご自身からの事情説明や釈明の言葉はあったでしょうか。まったく何もありませんでした。労働基準法を犯すようなことをしておきながら、あなたは最高責任者なのに何の責任も取らず、また損害を被った職員に対しても謝罪は一切なさいませんでした。むろん、労務担当理事も辞任しませんでした。このような組織的無責任体制を取り続けるなら、おそるべき事態を招来しかねません。

 経理の公開についてもあなたの態度は不誠実きわまりないものです。大学の経理は大学というものの性格上かぎりなく透明でなければなりません。文部省の指導にも経理の明朗化・適正化が含まれていました。にもかかわらず、北元理事長、あなたは私たちの経理公開要求をかたくなに拒み続けました。公開拒否の理由は「法で義務づけられていない。公開する必要はない」ということでした。しかし、文部省から強く指導されると、ついにあなたは「平成10年度の決算から公開する」と言わざるを得なくなりました。では、それ以前の経理はなぜ公開できないのでしょうか。団交の席で組合側が経理公開を要求するたびに、あなたの意を受けたとする理事たちが「不正はない。公認会計士が見ている。文部省にも報告している。やましいところはない」という主張を繰り返しました。では、経理公開したらいいではないか、と組合が言いますと、理事たちは沈黙して答えないか、「理事会の方針である」と居直るかのどちらかでした。北元理事長ご自身はどうお答えになるのでしょうか。私たちは何度も団交の席に理事長の出席を求めました。あなたはそれをすべて拒否しました。これまで41回の団交が行われましたが、組合がどんなに強く求めても、どんなに交渉がこじれても、あなたは一度も出てきませんでした。また公開要求書において理事長ご自身に直接質問をいたしました。しかし、要求書に対してはいまだに正式な返答をいただいておりません。いつまで無視し続けるつもりなのですか。団交への出席を求めれば拒否し、文書で理由を尋ねれば無視するというのは、大学の最高責任者にふさわしいやり方でもなければ、一人前の大人のすることでもありません。

 また、いわゆる正常化という問題があります。教職員組合はこの問題に積極的に取り組んできました。正常化は、組合員の労働条件と労働環境に密接に結びついているからです。

 文部省から異例の厳しい行政指導があり、教員の声を反映した大学運営を行うようにと指導されたはずです。しかし、その直後に北元理事長は教員を無視して一方的に佐々木氏を学長に任命しました。その佐々木氏は学部の意見を求めず、独断で3学部長を決めました。今、教員の信任が得られない学長・学部長のもとで、教育の現場が混乱し「危機的状況」に陥っていることをあなたは認識しておられるでしょうか。学長の選出について、教員側は話し合いによる解決を求め、全学教授会において審議を重ねてきました。そして3学部の教授会の支持も得て、本年2月に「全学教授会案」として新しい学長任用規程案が正式に成立しました。しかし、それをあなたは正面から拒否しました。いったい、「教員の意思を反映した大学運営をめざす」と、理事長ご自身が宣言されたあの1年前の言葉をどこに捨ててしまわれたのでしょうか。ぜひ法人広報誌「With」を読み返してください。

With Plus」の最新号では、話し合いの重要性と大学人としての良識が謳われています。お説ごもっともです。しかし、理事長ご自身がおやりになっていることは、たとえば正常化については話し合いの結果を踏みにじる行為であり、経理公開などについての態度は大学人としての良識をうんぬんする以前のことです。誰の目にも北元理事長の欺瞞は明らかです。

残念ですが、北陸大学教職員組合は、北元理事長の大学運営を認めることはできません。北元理事長、あなたが現在のような大学運営を続けるかぎり、私たちは理事長退陣要求を続ける所存です。一日も早く良識ある対応をされることを心から望む次第です。

敬具

平成10年3月3日

    北陸大学教職員組合組合員一同

 

追伸

 すでにご承知のように学生たちが北元理事長の退陣要求を掲げて多数の署名を集め、それを文部大臣に送りました。「学生が大事だ」とは、常々理事長がおっしゃっていることです。

今、当の学生たちは北元理事長のやり方を認めていません。理事長は「私学の独自性」という言葉がお好きのようですが、学生の支持が得られないような「私学の独自性」とはいったい何なのでしょうか。学生は鋭くもそれが理事長の「独断専行」(記者会見報道)を意味することを見抜いています。「私学の独自性」という言葉が、学生やキャンパスの利益ではなく、理事長ご自身の利害のために利用されていることは、もはや明らかです。