北陸大学教職員組合ニュース第71号(1997.5.19発行)

 

前代未聞!学長に続いて 

三学部長も辞任勧告される

これで大学・学部の運営はできるのか

 

教員の信を問えないような学部長は、即刻退任すべき

 平成941日、まもなく新入生を迎えて、新しい教育がスタートする新年度初日に、信じられない出来事が起こった。それは、三学部長(薬学・外国語・法学部)が、教育現場を知らない法人理事会によって一方的に任命され、新「学部長」として登場したのである。学部長は、学部教員の意思で選ばれるのが常識であり、理事会の決定はこれを無視した上、選任反対の学内世論が起こるいとまを与えないように、年度末ぎりぎりの331日に発表したのである。そのため、学部の体制がなにも整わない不完全な状態で新年度がスタートし、教育に多大な混乱をもたらした。しかも決定された学部長たるや教員の信望がほとんどない人物であり、学部を知らない理事会であれば、当然、学部長候補者として教員の意向を前もって確かめるはずであるのに、全くの独断決定であったという非常識さである。

 三学部長は、大学のことが多少は分かっている教授達であり、現況を判断すれば、その職にそぐわないことは自認しているはずである。 例えば薬学部では、前学部長が召集した322日の教員会での「学部長候補者選挙」で、山本郁男氏(新学部長)は86票中2票しか獲得できなかった。本人も投票に参加したこの結果から、薬学部の教員達の意思がどこにあるのかを認識できたはずである。なぜ山本氏が薬学部長を引き受けたのか、多くの教員は理解できない。理事会の決定に重きをおいたとしても、「辞退する」だけの常識はあろう。4月の薬学部教授会でこの矛盾を追及されると、山本氏は「仕方がなかった」と弁解した。そして「私は正当であり、教員の信は問わない」と宣言したのである。他学部でも同様なやりとりがあったと聞く。

 このような経緯から学部教育の円満な遂行に不安を抱いた過半数の教員は、各々の学部長に「辞任勧告」を行った。当然のなりゆきである。この様な人物を、独断で学部長に推薦したとされる佐々木「学長」も、7割近い教員からすでに辞任勧告されている。

 新学期早々、学長と全ての学部長が過半数の教員から辞任勧告されたことは、前代未聞の出来事であり、非常事態である。一刻も早く改善しなければ、教育現場に混乱をもたらし、学生に迷惑がかかる。学生やご父母に対し、三学部長は自分達をなんと説明するのか。

 北陸大学教職員組合は、薬学部では8割以上の教員が加入している組織である。我々は、このような非民主的な理事会決定に抗議し、理由もなく学部長職にとどまる山本薬学部長、高田外国語学部長ならびに松本法学部長に、潔く退陣されるよう希望する。 

 別紙に各学部教員から提出された辞任勧告書を掲載します。    (後掲)

組合アピール(2)

 

組合アピール(2)

 学部長の公選制を復活させよう!

 

 北陸大学は、学長のみならず、学部長さえ任命制である。こんな大学は、他にはほとんど考えられず、短期大学でさえ見出すのは困難である。

 現行の「北陸大学運営規程」によれば、学部長は学長が当該学部教授のうちから候補者を選出し、理事長に推薦した上で、任命されることになっている。現在の3学部長も、この規程に基づいて任命された。しかし、学長の場合と同様に、3人とも学部の教員会では信任されず、信頼も協力も何ら存在しないという異例の事態が続いている。

 しかし、本学でも、かつては学部長もはっきりと公選制だったのである。昭和52年の「北陸大学運営規程」によれば、学部長は当該学部教授の中から教授会において選出するとされ、内規によって候補者の選出は選挙によるものと明確に「公選制」が確立されていた。そして、現に昭和60年頃までは、学部長は民主的に選出されて、何も問題は生じなかったのである。

 ところが、外国語学部の新設に伴う特別措置として、学長の公選制が2年間停止された昭和62年に、学部長の公選制も同様に停止され、暫定的に任命制が導入された。その間に、学長については任命制の新「学長任用規程」が作られたが(63年)、学部長の選任については、平成4年改正の「北陸大学運営規程」によって任命制に変更された。平成1年から3年までは、規程のうえでもブランクになっているというお粗末さである。

 このような改正は、学長任用規程と同様に、またそれ以上に、手続的にも内容的にも疑問が大きい。理事会はその経緯と理由を公開すべきであって、当時の理事会はその結果について責任を負うべきである。とくに、「北陸大学運営規程」については、その改廃が全学教授会の意見を聞き理事会の議を経て決定するとなっているので、そのような手続が実際に踏まれたのかという点も点検される必要がある。

 学長が理事会で任命され、その学長が学部長を選出して理事会が任命するというシステムは、本学の「トップ・ダウン」的な管理方式を典型的に表現するものであるといってよい。学長も学部長もイエスマンにならざるをえず、そうでなければ任命されないという悪循環が続くのである。教員によって選ばれず、信任もされない学部長が、そのまま居すわるという耐えがたい状況を、一日も早く解消しなければならない。

 そのためにこそ、学長の公選制とともに、その前提として、学部長の公選制を是非実現しなければならない。これも、モデルはすでに存在していたのであり、それを復活すればよいのである。 

 

 

(山本薬学部長への辞任勧告)

 

山本郁男殿

              平成9年4月28日

         北陸大学薬学部教員

               桐山 典城,紺谷 仁

               坂元 倫子,澤西 啓之,

               土屋 隆,富森 毅,

               橋本 忠 山崎 満,

               吉藤 茂行.

               外55名

貴殿は,理事会決定により本年4月1日付けで「薬学部長」に就任されましたが,該理事会決定は、教授会の重要事項審議権を定めた学校教育法第59粂に違反する疑いがある上に、3月18日の文部省の本学に対する行政指導に低触していること,並びに貴殿も出席され投票もされた3月22日の正規の薬学部教員会の意思(投票結果)が無視されています。かかる事態は、薬学部を正常に運営する上で極めて障害が大きく,決して学部の発展になりません。また,3月31日の過半数を越える薬学部教員の決議及び抗議声明からも明らかなように,貴殿は「薬学部長」として認められておらず、さらに,4月3日及び9日の薬学部教授会で,学部教育の要である学部長を「3月31日に学長から突然言われ、仕方なく引き受けた」という貴殿の発言は余りにも無責任であります。貴殿は,学長が推薦し,規定によって決定されたことを最大のよりどころにしていますが,自治の下での学部運営が基本であるならば,学部教員の意思を無視した推薦や決定は何ら正当性はなく,学部教員を納得させ得ないことは自明の理であります。貴殿が、薬学部教員に「信を問う」意思がない以上、正常にその職務を果たすことは極めて困難です。

民主主義の原則の下、貴殿が真に薬学部の発展を望むならば,地位に汲々とすることなく,即刻「薬学部長」を辞任されるよう勧告いたします。

 

 

(高田外国語学部長への辞任勧告)

 

               1997年4月16日

高田維有殿

               外国語学部教員懇談会

 

  貴殿は、理事会決定により本年4月1日付で「外国語学部長」に就任されました。しかし、該理事会決定は、教学の意思を何ら反映するものではなく、教授会の重要事項審議権を定めた学校教育法59条に背反する疑いの強いものであり、文部省の行政指導の趣旨にも反する一方的な決議であります。そのため当外国語学部教員懇談会は、先の3月31日に、理事会の新学長・学部長の選任に反対する決議をいたしましたが、本日1997年4月16日、我々はここに、貴殿が昨年来の教員多数による学長・学部長の公選制導入の要求を誠実に受けとめ、すみやかに、「外国語学部長」の職を辞任されるよう、強く勧告いたします。

 なお、懇談会には34名の出席があり、29名が辞任勧告に賛同いたしました。

 

 

(松本法学部長への辞任勧告)

 

               平成9年4月10日

松 本 幹 雄 殿

               法学部教員懇談会

 貴殿は、理事会決定により本年4月1日付で「法学部長」に就任されましたが、当法学部教員懇談会としては、該理事会決定が、教授会の重要事項審議権を定めた学校教育法59条に違反する疑いが極めて強いことに鑑み、貴殿に対し、即刻、「法学部長」を辞任されるよう勧告いたします。