北陸大学教職員組合ニュース第63号(1997.4.8発行)
次期学長・学部長選任
またも理事会独断で新人事決定
3月29日、法人理事会は、次期学長・学部長を独断で選任しました。
我々教職員組合は、昨年8月理事会が衛藤瀋吉氏を教授会に諮らずに次期学長に選任したことに対し、不当性を訴えてその後の団交等で選任撤回を求めてきましたし、同じ趣旨で活動する公選制を求める有志の会(教員136名)や選任無効確認訴訟の教授原告団(教授25名)を強力に支援してきました。また、組合は、学長や理事長に再三にわたって公開質問状を提出するなどして大学の民主的な運営について積極的にアピールしました。教員133名による次期学長候補者自主選挙、法人の衛藤氏選任の白紙撤回と裁判和解調停、その間の有志教員と法人との交渉及び和解の事前交渉で、学園の正常化に向かって進展し始めたと思われました。
しかるに3月末になって突然の和解調停決裂と、再度の理事会独断による新人事決定は、大学を心配する双方の人達のこれまでの歩み寄りの努力を無駄にし、ものごとを一挙に振り出しに戻してしまいました。むしろ、非民主的なやり方は以前にも増して悪化したといっても過言ではありません。教員の意思を無視して憚らない理事会は文部省の行政指導をどのように心得ているのでしょうか。民主主義を推進する公的な立場にもある佐々木学長は、学内でそれを否定する理由は何なのでしょうか。理事会、学長の行為は常軌を逸していると言わざるを得ません。
我々組合は、大学という最高学府での日常の大学教育と全く整合性がない理論で押しつけた今回の新人事決定を絶対許すことはできません。誰が崇高な教育理念を語れるのでしょうか。我々の働く教育現場の混乱と荒廃は必然です。我々はそれを防止するために立ち上がらなければなりません。学生、同窓生、そして社会に対して信頼を回復せねばなりません。
既に教員多数はそれぞれの学部で抗議の意思表示をしています。また、有志の会交渉委員と裁判の原告団は抗議声明を発表しています。一方、法人側が「With」(3月31日)で発表した記事と理事長の声明に対して、法学部教員から「
『教学新体制』の実態とは何か」という反論文書が出ています。組合は、設立趣旨に基づき、これらの文書(資料)を皆様に公開いたします。
(資料:教員有志の会並びに原告団発表の抗議声明)
平成9年3月31日
北陸大学理事長
北元喜朗殿
北陸大学新学長・新各学部長の一方的選任に対する抗議および要求
平成9年3月29日の理事会において、新しい学長、3学部長が、教員の意思を無視して、一方的に選任・決定されたことに対して私たちは強く抗議いたします。これは、平成9年2月27日の「with」誌に理事長自らの名前で掲載された文書中の「教員の意思を反映できる大学運営を目指し、学長選任も含めた正常化になお一層の努力を重ねる」ということばに真っ向から違背するものであり、教員の信頼を裏切る行為であります。
私たちは、教員の声が反映された大学運営の実現のために、平成8年2月に、学長・学部長の公選による選出を求める運動を開始いたしました。理事会側は当初それに対して誠実に対応するやに見えましたが、平成8年8月には、教員の声を無視して一方的に、次期学長として、元亜細亜大学学長衛藤氏を選任し決定をしました。私たちはすぐに抗議の声を上げ撤回も求めましたが、無視されました。結局、望むところではありませんでしたが、12月には裁判を起こさざるをえなくなりました。それほどまでに私たちは、教員の声を聞いてほしかったのです。しかし、残念ながら理事会はその訴えの重みを認識せず、深刻な事態にふさわしい対応はまったくありませんでした。そこで、私たちは、平成9年2月に衛籐氏任命の禁止を求める仮処分申請をしなければならなくなりました。ここに至っても理事会の態度はかたくななままでした。万やむを得ず、私たちは、教員の意思が奈辺にあるかをより具体的に知ってもらうために、2月21日には、「自主選挙」を行い、教員側の意思を代表できる人を選出いたしました。この選挙には、不参加を求める通達が学長名によって出されたにもかかわらず、全教員の73%もの多数が参加いたしました。
この数字は、いかに切実に北陸大学の多数の教員が学長・学部長の公選による選出を求めているかを明白にあらわすものでした。
そして、ここに至ってやっと、理事会は衛藤氏の選任を撤回し、北元理事長の「教員の意思を反映できる大学運営を目指し云々」ということばが出されました。私たちはこのことばを信じました。
以後、中川専務理事、松村常務理事、周理事などの出席で行われた、公選制を求める教員有志の交渉委員との交渉の場においても、法人側の態度には、教員の意見を反映していきたいという前向きのものが感じられ、私たちはそれなりの評価をしておりました。裁判所での和解交渉にもそれなりの誠実な対応をしてもらえるものと期待をいたしました。ところが、3月27日に、理事会は態度を一変し、それまでの交渉で築かれてきたものをすべて反故にするような和解案を出し、さらに、3月29日には、理事会において、新学長、新学部長を一方的に決定してしまいました。大学運営の要となる職の人選をわずか3日間で行ったのです。
これは暴挙としか言いようがないものであり、また、理事会と教員との回復されかけた信頼関係をすべて失わせるものです。
北元理事長が自らの名でお出しになった文の意味はいったい何だったのでしょうか。単にその場しのぎの便宜的なものでしかなかったのでしょうか。仮にも大学を代表する人のことばがそのようないいかげんなものであっていいはずがありません。しかし、教員の意思をまったく反映していない今回の決定をそのまま強行するようなことがあれば、私たちは、そう判断せざるをえなくなり、北陸大学は虚言を弄する人を長としていることになります。
また、本年3月に文部省より指導があった事項の一つに「理事会と教学との協働関係の確立」があったはずです。理事会と教学とは信頼関係を回復し、緊密な連携のできる体制を作らなければなりません。今回の決定は指導内容に逆行するものです。
北元理事長および理事会が、真に北陸大学の発展を願うのでしたら、今回の新学長・学部長の決定に関して全教員の信任を問うか、もしくは決定を即座に撤回し、全教員の意思を反映できる方法で新たに選出を行うべきです。
以上、今回の決定に強く抗議するとともに、全教員による信任投票あるいは選出のやり直しを要求するものです。
学長・学部長の公選制を求める教員有志
学長選任無効確認訴訟原告団
(資料:3月31日 薬学部教員会の決議声明)
平成9年3月31日
学校法人 北陸大学
理事長 北元喜朗 殿
薬学部教員会
議長 橋本 忠
薬学部教員会は以下の決議を行いましたので、報告いたします。
決 議
1 選任反対決議
学校法人北陸大学理事会は、3月29日、またしても教学の意思を顧みず、学長、学部長を決定したと称している。
昨年、教員多数が公選制導入を求めているにも拘わらず、理事会は、我々教員に何ら諮ることなく、衛藤潘吉氏を学長に選任し、我々は、その決定手続を問題視した。結果、理事会は衛籐氏の選任を徹回し、学内に混乱を生ぜしめ、かつ、氏に多大なるご迷惑もおかけするに至った。
この混乱を収拾する責任を有するはずの理事会は、しかし、教授25名を原告とする選任無効訴訟の和解交渉に際し、一旦は話し合いのテーブルに着く姿勢をみせながらも、何ゆえか一転して、極めて不誠実な態度を取り、和解不調に至らしめた。さらに、文部省からも、「理事会等と教学組織の協働関係の確立」を図るべきとの行政指導を受けながら、この趣旨に反し、衛藤氏選任の場合と全く同様に、理事会 独断で新人事を決定した。我々薬学部教員は、かかる手続による学長・学部長選任に断固反対する。
2 協議要求決議
今次の教学人事決定は、憲法第23条、学校教育法第59条、そして、文部省の行政指導の趣旨にも反する違法、不当なものである。よって、我々薬学部教員は、理事会に対し、かかる人事を凍結し、正常な人事のために、直ちに我々との協議を開始することを要求する。
平成9年3月31日
北陸大学薬学部教員会
(資料:3月31日 外国語学部教員懇談会の決議声明)
(資料:3月31日 法学部教員会の決議声明)
上記の2資料は、薬学部資料と趣旨が同様でありますので、省略させていただきます。
それぞれの学部での議決状況は以下の通りです。
薬学部 投票者:75名 決議に賛成:66票、反対:5票、白票:4票
外国語学部 懇談会出席者27名において決議された。
法学部 投票者:23名 決議に賛成:17票、反対:3票、白票:3票
(資料:3月31日 薬学部教員会の抗議声明)
平成9年3月31日
北陸大学次期学長
佐々木吉男殿
薬学部教員会
議長 橋本 忠
平成9年3月31日開催の薬学部教員会の議決に従い、
以下の抗議を行います。
抗 議
平成9年3月22日(土)開催の薬学部教員会の意思を無視し、独断で次期学部長候補者を推薦した事に強く抗議します。
平成9年3月31日
北陸大学薬学部教員会
議決状況は以下の通り
投票者:75名 決議に賛成:68票、反対:4票、白票:3票
なお、抗議声明中にある「薬学部教員会の意思」とは、当日の薬学部教員会(86名出席)における 次期薬学部長候補者選出投票の結果を指している。