北陸大学教職員組合ニュース第61号(1997.3.31発行)  

 

学園正常化に

  教員の意思は反映されるのか

 すでに3月29日付け新聞で報道されたように、次期学長選任を含む学園正常化のための裁判所による和解調停は決裂いたしました。教員有志の会交渉委員と原告団が発表した経過報告を以下に掲載します。

  

 

和解調停決裂する

法人側 正常化に誠意なし

 

                         平成9328

                         公選制を求める教員有志の会交渉委員

                         次期学長選任無効確認訴訟原告団

 

 衛藤瀋吉氏の次期北陸大学学長選任の白紙撤回を受けて、一連の裁判は金沢地裁が示した和解提案を、原告・法人(被告)の両者が受け入れて調停に持ち込まれた(228日)。これを受け、次期学長問題の解決と教学システムの正常化に向けて、有志教員交渉委員と法人側(中川専務理事が中心)とで実質的な話し合いを行ってきた。ところが、312日中川理事が、教員意思を尊重するとしながらも、和解案の内容交渉はできないと一方的に交渉中止を宣言し、それ以来法人側の拒否で話し合いは中断している。法人側は和解のための条件提示、話し合いを裁判所においてのみ行う姿勢に変えたものと受け止められた。

 

3月28日和解調停決裂!

 しかるに、金沢地裁での法人側の和解条項提示日である321日には、法人側弁護士は、法人との和解案作りが不調で、和解条項(案)が示せないと裁判長に申し出た。裁判長は原告側提示日である324日に法人側にも出席を求めるとともに、早く和解案を提示するよう勧告した。

 

 324日、原告側弁護士は、11項目にわたる原告側和解条項(案)を裁判長に提出した。法人側は依然として話し合いの席につこうとしなかった。これには裁判長も不満を表し、

たまたま別件で裁判所に来ていた法人側弁護士を呼んで事情説明を求めたが、弁護士は理事者と折衝しているが不調であると釈明するにとどまった。

 328日、裁判長は、昨27日に法人側から和解条項(案)が提出されたと説明し、原告側に提示した。しかし2項目からなる簡単なもので、第1項は、教員の意思を無視しており、従来通り理事会が学長人事を行うことを主張している。第2項は、一方的に決めた学長・学部長のもとで、民主的な改革を行う必要があるかどうか検討するというもので、矛盾に満ちており、むしろ暫定学長のもとで規定案作りや新学長選出を行うとしたこれまでの提案より後退している。裁判所側がいろいろ質問しても「分からない」「答えられない」の一点張りで、裁判長も法人代理人は理事会の代弁者でないと判断したようである。

 原告側は、原告側和解条項の逐次検討を裁判長に求めたが、法人側は、和解条項を検討する以前の段階であるとして(原告側要求を)無視した。それでも裁判長は、法人側に再考するよう促した。法人代理人は理事者と連絡した後、口頭で、第3項『前項の目的のため、新学長のもと、教育職員の意見を徴する場を設けることを約す』を付け加えたが、理事会を開いていないので、再考の余地はなく、法人側和解条項の内容の域を出ることはないと述べるにとどまった。

 ここにおいて、原告側はこれ以上の和解交渉は無理であると判断し、裁判所の和解調停を断念した。原告代理人は「当初提示の内容、また、事前交渉の内容からも大幅に後退している。これではとうてい信用できない」と感想を述べた。

 法人側代理人は「事前交渉で中川理事が提案していた事柄は、中川理事の個人的な見解である。法人としては、この法人側和解条項の通り進めるだけだ」とした。

 

 以上が簡単な経緯であります。 交渉委員と原告団は和解調停に入ったときの理事長の「教員の意思を反映した大学運営を目指す」とした言葉(「With」)を信じ、学園正常化に向けて法人側が誠意ある態度を示し、和解が成立すると期待していましたが、これまで通りの方式を踏襲するという、全く事の重大性を理解していない態度に失望し、怒りさえ覚えます。本当に大学の教育・研究の正常な発展を願っているのでしょうか、学生のことを考えているのでしょうか、甚だ疑問に思います。

 以下に、双方の和解条項(案)を記載します。これを読まれて皆様のご判断を仰ぎたく存じます。学園を正常化するには皆様のご支援が必要です。ぜひご協力をお願いいたします。

 

 

法人(被告)側:和解条項(案)

1.新学長は、現行の学長任用規程に基づき選任する。

2.今後、本学は教育職員の意思を反映できる仕組みを、教育職員の意見を徴しつつ 研究することを含めて、学長選任その他の選考手続きにつき、私学におけるある べき姿を検討していく。

.(口頭)前項の目的のため、新学長のもと、教育職員の意見を徴する場を設けることを約す。

 

 

原告側:和解条項(案)

 

一 被告は、平成九年四月一日以降の北陸大学の学長に関し、暫定的に、任期を同年 五月末までとする学長事務取扱を選任するものとし、その人選にあたっては、教 育職員の多数の支持が得られないことが明らかとなっている者は避けるなど、北 陸大学の教育職員の意思を尊重するものとする。

 

二 被告は、前項の学長事務取扱の任期中に、学長の任免につき北陸大学の教育職 員の意思が反映するように、現行の北陸大学学長任用規程を改正するものとす る。

   

三 被告は、前項により改正された学長任用規程に基づく新学長の選任後速やかに、 学部長の任免、全学教授会の権限並びに構成員の任免、教育職員の採用・昇任・ 懲戒および教学に関する学内諸規定の改廃手続き等につき、北陸大学の教育職員 の意思が反映するように学内機構・諸規定の改革整備を進めるものとする。

 

四 本和解成立後、前項に記載した学部長および全学教授会の構成員の選任方法につ いての規定の改正前に任期が到来する学部長および全学教授会の構成員の後任人 事については、現行規定により被告が行うものとするが、被告はその人選にあた っては当該学部の教育職員の意思を尊重するものとする。

 

五 二項および三項に定める機構・諸規定の改革整備にあたっては、被告は、北陸大 学の各学部ごとに所属の教育職員が定めた方法で選出した各三名の協議委員との 協議に基づいて進めるものとする。

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六 被告は、二項および三項の機構・諸規定の改革整備にあたっては以下の点を基本 的な方針とする。

 1 学長の任免については北陸大学の教育職員による議を、学部長の任免については当該学部の教育職員による議を、それぞれ経ることを要するものとすること。

 2 全学教授会の構成員のうち、学長および学部長を除くその余の構成員の選任・解任は、各学部教授会の権限とすること。

 3 教育職員の採用・昇任・懲戒については、その教育職員が属する各学部教授会の議に基づかずにこれを行うことができないものとすること。

 

七 前項1および2に記載する教育職員による議を行う機関およびその方法の具体的 内容は五項に定める協議に基づき定めるものとするが、教育職員側の協議委員か ら提案があった場合には、被告は、全学教授会・各学部教授会に限定することな く教育職員による選挙の方法についても検討対象とすることを拒否しないものと する。

 

八 被告は、北陸大学の次期学長の選任、現学長に対する辞任要求、学部長の選任等 に関する今回の一連の紛争に関し、原告らあるいはその他の教育職員および一般 職員に対し、本和解前の一切の行動を理由として本人の意に反するいかなる処分 も行わないものとする。

 

九 被告は本和解の趣旨を速やかに北陸大学において理事長名で広報するものとし、 また原告らが和解の趣旨を公表することに異議を述べないものとする。

 

十 原告らはその余の請求を放棄する。

 

十一 訴訟費用は各自の負担とする。