北陸大学教職員組合ニュース第56号(1997.3.4発行)   

 

「全学教授会」の実態

        残念ながら、現状は教学を代表できる機関ではない

 周知のように、「自主選挙」を通して北陸大学全教員の7割以上が、弾圧にもかかわらずよく試練に耐え、自らの意思を決然と示した。あとはその意思を理事会がどのように受けとめるかが残った。果たして、2月26日、理事会は教員有志の兼ねてからの要求通り、不当な理事会決定を撤回した。そして、何故か日付のないものであるが、「理事長声明文」でも今後の方針として、「教授会を中心とした教員の意思を反映できる大学運営を目指し、学長選任も含めた正常化になお一層の努力を重ねる方針です」としている。

 ところが声明文は、撤回の理由として、「現在の学内状況が衛藤氏の手腕を発揮していただく環境」にないことをあげるのみで、不思議なことに、それをもたらした原因については一言の言及もなく、従って、理事会の謝罪どころか、釈明すら語っていない。さらに不思議なことに、自主選挙を通じて示された教員の多数意思に関してもまったく触れていない。繰り返すまでもなく、ことの起こりは、理事会が8割に近い教員の真剣な要望を完全に無視したことであった。それに対する一遍の反省もなしに、現在の「学内状況」のみを理由とし、また、当然触れなければならない教員の多数意思に対して一顧だにしていないことは、一体いかなる魂胆があってのことであろうか。

 これらのことと呼応するかのように、2月27日の全学教授会での学長報告および「理事長声明文」を伝えた2月27日付けの『With』では、「学内正常化の軸」として全学教授会が前面に出されている。一方、これまで、絶対多数からなる教員有志の要望および学長選任問題を全学教授会で取り上げることに対して終始否定的であった3学部長も、全学教授会での審議を声高に主張しはじめた。これは一体何を意味するのか。

 確かに全学教授会は現行制度上は教学の最上位の審議機関である。それを根拠に理事会は、特に今年2月以降、教員有志の「公選制」要求運動に対して「正規の機関で議を経ようともせず」等の非難を繰り返すようになった。しかし、それにもかかわらず確かなことは、少なくとも教員の7割以上は、これまでの経緯から、全学教授会が教学の意思を代表してきたとは思っていないことである。従って、学内民主化を目指す本組合も、改めて全学教授会の審議実態と「公選制」要求との関わりを明らかにしなければならない。

 最初に指摘しておきたいことは、全学教授会の構成である。構成員16名の内、学長、3学部長、各教務委員長、学生部長、学術資料部長の計9名が、理事長の考えに添う人事であることは公然の事実である。つまり、理事長の意に逆らって任命されることはありえない。あとの7名は学部長の判断により指名される。このような構成から帰着することは、全学教授会は構成上理事長の強い影響下にあるということである。

 事実、「公選制」が初めて全学教授会に提案されたとき、久野学長は最初こそ意欲的な発言をしたが、3学部長は何故かどの学部長も、136名の要望を真剣に受けとめようとはしなかった。佐々木法学部長は、「全学教授会を拘束する提案」かと提案自体に批判的であり、次いで「数字のことは言わないでくれ」と、多数要望の事実を無視する発言をした。松田学部長は、「規程にない」と言い、河島薬学部長は、あえて当時さして緊急ではなかった入学志願者減の対策のことを取り上げるよう提案した。彼はこのことをその後話題にしたことはない。山本学生部長は、採決すれば反対多数で否決されるのに、とさえ言った。これが教学役職者の最初の反応であった。

 その後、6月も7月も、学部長たちは「公選制」を要望する構成教授の熱心な提案説明にもかかわらず、規程にない等の手続き論を繰り返すのみで、問題の中身に決して入ろうとはせず、学長も次第に消極的になったのである。というより、学長の無責任ぶりは8月の理事会決定を伝えた報告や、新聞での衛藤氏の談話を通じて、情けないほどに明らかになった。学長は報告の中で、学長選任問題が取り沙汰されていた4月以来、自分が衛藤氏と何度も会い、理事会で推薦したと明言した。しかもそれは虚言であったことが衛藤氏の談話により明らかにされた。理事会決定および学長のとった態度は明白な背信行為である。当然、数名の教授から抗議の声があがったが、学長からは一言の詫びも釈明もなかった。一方、「全学教授会はこのようなやり方に納得できるのか、全学教授会構成員の意見を聞きたい」という発言に対し、学部長たちはまったく答えず、学長から「見解の相違がある。佐々木先生の見解は?」と促されて、やっと「この場は報告を聞く場、報告を承った。見解を問われるのはおかしい。言うつもりはない」と言明した。

 ところが、この問題では局外者であるかのようにふるまっていた全学教授会多数派は、今年2月になって、「公選制」要求運動の論理的帰結として、圧倒的多数教員の同意の下に学長自主選挙が開始されるや、運動を恫喝する学長「通知」に、30分にも満たない議論での「支持決議」をもって同調した。「通知」は提案時には既に学長印を押されて出来上がっていたものであった。学長は、自主選挙がいかなるものであるかを吟味することなく、国で言うなら、「国家反逆罪」であるとか、「政府転覆罪」であるとか、激しい口調で非難し、それを受けて松田外国語学部長は法治国家で「人民管理」は許されないというような決め付け方をした。学部長たちの発言の中には「反社会的行為」という発言もあった。教員有志世話人になっている構成教授が佐々木法学部長に、自主選挙の原因となった理事会の決定の仕方についてどう思うのか、と質問したのに対し、佐々木氏は再三にわたって問題をすり替え、はぐらかし、回答しようとしなかったが、問い詰められた挙げ句に出たのが、「仕方がない」という言葉だった。このように、原因についてまったく議論せず、佐々木法学部長、山本学生部長、三浦学術資料部長に至っては自主選挙実施の提案文すら見ていないと宣言しておきながら、学長が十分な反論を許さないまま突然採決すると言いだすと、意気込んで挙手したのであった。全学教授会における挙手採決は今まで皆無であったどころか、そもそも、学長通知配付の可否など全学教授会の審議事項にはないのに強行したのである。彼らはあらかじめ仕組まれた「決議」に「加担」したとしか言いようがない。

 このような全学教授会の「支持決議」をともなった「通知」は、「重大な決意をもって対処せざるをえない」との表現をもって懲戒解雇を暗示した「通告書」の根拠として利用されたが、ご承知のように全教員の73%によって完全に拒否された。一方、杜撰な「決議」をした全学教授会多数派は、学問の府らしからぬ恫喝に利用されたことに対して、何ら見解を表明していない。もちろん反省の弁もない。それどころか、9月の理事会決定報告のときは、「見解を問うのはおかしい」と言った佐々木法学部長を始めとする3学部長は、今回2月27日の報告のときは、自らに対しては何ら反省することなく、全学教授会に権限を持たせてこの問題を扱うべきだと、積極的に見解を表明したのである。

 全学教授会の実態は、このようなものであった。そして理事会は、全学教授会が正式審議機関だというキャンペーンを開始したのである。これで本当に「教員の意思を反映できる大学運営」が可能だろうか。現全学教授会は既に、十分な議論もなく、理事会の意向に添うだけの「決議」をしてしまった。73%の教員はそのような全学教授会を信じることはできないし、それを軸にした「正常化」を強行すれば、原告・被告間の和解は成立することはないだろう。教員の意思を聞くような素振りを見せて、その実、自ら選任した役職教員を中心に何事かを策謀することは世間をたぶらかすというものであり、いずれ裁判等を通して真実が明るみに出ることにより、北陸大学の信用をますます傷つけることにつながると言えよう。

学長の任期切れを目前にしてまだ次期学長の目処がたっていないことは混乱状態以外の何ものでもない。我々は真の正常化をもたらすために、理事会が先ず、混乱をもたらしたことに対する責任を明確にして、信用を回復することを要求する。