北陸大学教職員組合ニュース第35号(1996.11.1発行)

 父母会の理解と相互信頼を強く望む

〜松雲友の会会長本良之氏からの手紙に委員長が答える〜

 

 先月18日に本学の全教員宛に、父母会「松雲友の会」会長本良之氏から、今回のスト権確立に対して手紙(この紙面裏にコピー)が送付されました。その文面から教職員組合の設立趣旨や、大学の教育環境の現状が正しく理解されていないことを知り、私共の活動がまだまだ至らないことを認識しました。
 その一方で、組合が大学当局に敵対している迷惑団体であるかのような一方的な見解を、父母四千人を代表する会長が示されたことに、大きなショックも受けました。
 学生父母との真の信頼関係を築くために、私共教職員は何をすべきかはよくわかっています。しかし、先ず父母会の理解を得る必要があると考え、委員長が答えるかたちで以下の手紙を父母会役員に送りました。
今後、全ての父母に大学の現状を理解していただく努力をしたいと考えています。

 

 

北陸大学松雲友の会 役員各位

拝啓 秋冷の侯、皆様には益々ご清栄のこととご推察申し上げます。

 さて、先日貴会長より、私共北陸大学教職員宛てに別添のようなIO月18日付けのお手紙をいただきました。学生のご父母としてのお立場から、本学の現状にご懸念を持たれるのは当然のことであり、私共も心苦しく思っております。私共が教育の場であることを配慮して、当初から組合について慎重に対応してまいりましたことは、外国人講師不当解雇問題の際に初めて皆様に差し上げた「何故この時世に組合が結成されなければならなかったかについて」の文書(本年3月8日付け)でも申し上げた通りですし、現在でも変わってはおりません。
 しかるにこの度、貴会長から「父母四千人強を代表して」として、突然このような手紙をしかも教職員全員に送られてまいりましたので、「皆様との信頼関係を保つために」私共の所見を述べきせていただきます。

 文中組合ニュースの内容が「あたかも大学当局に対して敵対しているような感すらいたします」とありますが、発行したニュースの一部のみをお送りしたためにそのように受け取られたのであれば、誠に残念です。例えば、次期学長選任の件については、2月に全数員の約8割に当たる135名の署名を添えて「教員の意志での学長選出」を要望したのに対して、専務理事は「署名の重みを尊重し、話し合いの場を作る」と回答しておきながら、夏休み明けに抜き打ち的に理事会だけで決めた結果をマスコミに発表しました。通常学長の決定は早くとも12月ですので、秋以降に話し合いがあるものと期待していた教員は完全に裏切られたことになります。教育職員の人事や学生の監禁事件についての質問に学長は全く答えず、聞くところによると、理事会から回答することを止められているとのことです。我々教員の代表である学長が、学生や教員に関することに答えられないなどは、通常の大学では、信じられないことです。皆様もお読みになられたと思います「市販された某雑誌記事の内容」で、大学と学生や教職員が被った不名誉と不利益を、回復するようにとの要望や要求も、無視されました。給与改定の件では、確かに昨年組合結成後に大幅なベースアップがありましたが、それでも未だ全国平均以下です。それ以前はいかに低かったかということです。本年はべースアップがゼロとのことですので、本学の財政状況や役員報酬を示して貰って考えましょうと私共は言っているだけです。それなのに、役職手当だけがなぜか上がりました。真に財政が苦しいことが分かれば、ゼロで我慢してもいいのです。しかしこれに対ての返事がないのです。このように私共のはうは、「大学当局との対話」をはかるべく常に努力しているのです。しかし、私共の努力は無視されているのです。このような権力に対抗できるように、「憲法をはじめとする法律」が弱者の私共に与えてくれているのが、いわゆるスト権です。勿論この行使には、十分慎重でなければならないことは当然です。

 学生にとって「平穏で学業に専念できる教育環境」が与えられるべきことはお説のとおりです。そのためにも、「平穏で教育と研究に専念できる環境」が教員にも与えられなければならないのです。しかし、意見を表明した学生が教員以外の法人職員こよって逮捕監禁されるようなこと(学生の補導は教育の一環)や不明朗な恣意的教員人事を放置しておいて、教育環境が保証されるのでしょうか。多くの学生たちから教員が「某雑誌記事に関して、なぜ、先生達は何もせずに黙っているのか」と抗議されていますし、いくつかのグループの学生たちが、大学の現状を批判または改善を要求するビラを頻繁に配布し、私共が入手できたものだけでも十数種類にものぼります。そのために、学生達は絶えず法人に監視されています。

そのなかの一つのビラ配布で前述の監禁事件が起きたのです。このような事実をご父母の皆様方はご存じだったでしょうか。現状をこのまま放置すれば、学生の動きがますます激しくなるかもしれません。彼ら学生を犠牲にしないためにも、私共教員が代わりにやらなければならない事もあるのです。

「大学と父母との信頼関係」が大切なことは私共も重々承知しております。しかし、お手紙で言われている大学が法人理事会ではなく私共教職員を指しているのでしたら、不本意ながら一言申し上げさせていただきます。それほどまでに私共との信親閲係を重視されるのならば、なぜ、現状を正確に知る努力をなさらないのでしょうか。私共との「対話」をはかられないのでしょうか。多くの教授を含めて7割以上の教員が組合に入っているのです。役員の皆様方は、理事会側の偏った情報のみで判断されていらっしゃるように思えてなりません。「学生との信頼関係」を最も重視し教育を大切にしている私共をここまで追いつめている根元がどこにあるのかを知っていただき、真に明るい平穏な教育環境の学園をつくるために、私共は皆様方との対語を心から望んでおります。        敬具

  平成8年10月30日
          北陸大学教職員組合
          執行委員長 土屋隆