北陸大学教職員組合ニュース第11号(1996.2.16発行)

臨時組合大会開催される 1996.2.5


決議:オリンガー講師全面支援

不当な「覚書」を即時公開せよ!


今回の組合大会は、百数十名に及ぶ組合員の参加のもと、(1)昨年暮れの12月27日スコット・オリンガー講師に出された解約通知と(2)私たちが現在抱えている問題をめぐって真剣に報告、討論がなされました。

(1)執行委員会から、解約通知の問題で、次の2点に重点を置いた報告がなされました。第1は、解約通知を、不当と考え、その撤回を求める理由の説明です。初めに、法人側は雇用期問内であっても3ケ月前の予告ならば解雇が正当化できるという姿勢をとり続けていますが、社会通念から判断し、妥当な理由なき解雇は、解雇権の濫用にあたることが指摘されました。3ケ月前ならばどんな場合でも解雇できるのでは断じでありません。これが許されれば、私たちは、教育と研究に常に不安を抱えることになります。

第2は、手続きの問題です。学長も知らず、いきなり解雇を伝える横暴さです。今日まで、教員の採用にあたり、教務委員会や教員の意向を無視して、つまり、教務上、科目上の必要性を考慮しないで、一方的に人事がなされてきました。オリンガー講師の今回の解雇が行われれば、採用から解雇まで今後ますます不当な事態が生じることが避けられなくなります。

この後、執行委員会から、解約通知が届く前後の経過について報告がなされました。質疑の後、書記長からの提案「オリッガー講師を、物心両面から組合は支援する」が、満場一致で決議されました。

(2)続いて、私たちの一貫した要求事項に関して、書記長の報告に基づいて、質疑がなされました。要約は以下の通りです。
@昨年から継続の給与規程と就業規則の改正を要求します。
A咋年の団交の席上、法人側は外国人の雇用基本方針を、年内(95年内)に作成し、提示する、と確約していますが、未だに示していません。これの早期実現を要求します。
B法人は新規採用の教員と、不当な「覚書」を交しています。前回の団交で組合は、これを示し、公開せよ、と主張しました。これに対して、法人は、これには問題があるので、後に直して、提示する、と約束しました。教員採用期の今も公開していません。約束を、守らない法人の不当性に、多くの組合員から糾弾の声が上がりました。
C教育環境、教育条件の向上と私たちの地位の保全と向上のため、大学の正常化・民主化に精力的に取り組みます。
D今後とも私たちはサウンドトラックやフォワードについて、納得のいく説明を求めていきます。
Eその他に、不明朗な給与表の問題、ボーナス査定の問題等を含め、今後の闘いを執行部に一任する提案が、承認されました。


金沢地裁に仮処分申請



組合は1月31日に法人に対して、オリンガー専任講師と連名で、通知を出し、オリンガー講師に対する解雇通知の撤回を改めて要求し、もし、2月7日午後5時までに撤回しなければ、法に訴えるという旨知らせました。私たちは、法人が、大学人にふさわしいだけの良識をもって対応し、解雇通知を撤回することを期待していたのですが、それは見事に裏切られました。法人は2月7日午後6時に、組合三役を本部に呼びつけ、一枚の通知書なるものを出し、撤回拒否を再度表明しました。そして文言の最後には、組合の活動に対して「本学の諸規定にもとる行為のあった場合は、断固たる対応をとる」との脅しとも取れる一文が付け加えてありました。

オリンガー講師はすぐに提訴の手続きにとりかかり、2月13日に金沢地方裁判所に書類を提出しました。これで、法人は、法廷で裁かれる道を自ら開くこととなりました。組合は、2月5日の臨時大会で、満場一致で決定しましたようにこれからもオリンガー講師の全面的支援を続けていくことになります。


今回の解雇の不透明さ

今回のオリンガー講師に対する解雇通知を組合ニュースで報じてから、また、組合大会で事情説明が行われてからも、なぜ、オリンガー講師が解雇されるのか、理由がどうもよくわからないという意見がたくさんありました。

法人側は、解雇できるという根拠として契約書の中の「3ヶ月前に通知」という条項をあげていますが、これを別にして、現在までに、解雇理由として示されたのは、煎じ詰めれば、わずか2点だけです。つまり、12月19日にオリンガー講師本人が「契約破棄」を申し出たこと、および、オリンガー講師が「学部の事情を無視した担当授業の希望をした」ことだけです。しかしながら、この2点については、すでに組合ニュースでもお知らせしたように、まったく事実誤認に基づいたものです。「契約破棄の申し出」という理由がいかに事実を曲げたものであるかについては、オリンガー講師本人の口から何度も法人に伝えられ、組合も団体交渉の場で、何度も訴えました。そもそも、2ヵ月前に父親になり、これからの生活を考えなけれぱならない人間が、わざわざ契約破棄など申し出るでしょうか。しかも契約書に署名をしたのは前日です。学部の事情云々の件についても、現理事長がオリンガー講師を招聘したときの約束の履行を求めただけのことです。これについては、法人側は、解約通知を出してから、突然オリンガー講師は英語の教員として着任したのであって、国際関係の教員としてではないという主張をしはじめました。もし、法人側の主張が本当なら、解約通知を出す前に、はっきりとそう言うべきではなかったのでしょうか。契約交渉の席でも一度もそういう話は出ませんでした。今ごろになってそういうことを主張するのは、「歴史の改ざん」にも似た、真実を糊塗して、責任のがれをはかろうとする犯罪的行為ではないでしょうか。実際、オリンガー講師の着任時に、当時の外国語学部長も教務関係者も国際関係の教員として紹介をうけているのです。また、外国語学部教授会でオリンガー講師の担当授業が問題の対象として正式に議論されたことは現在までに一度もありません。つまり、法人側が解雇の理由としていることは筋違いのことぱかりなのです。

「どうもよくわからない」という組合員の感想は当然なのです。実際、ここまでのところ、法人は誰もが納得のいく解雇理由を出していないのですから。法人側は、大学人にふさわしい良識と見識に基づいた手続きを一切行なわず、小学生でも疑問を持たざるをえないような理由で、オリンガー講師の解雇を強行しようとしています。不当解雇ということばがこれほど当てはまる解雇もめずらしいのではないでしようか。


他にも多数の不透明解雇


外国語学部では、類似の過程を経て、現在までに多数の教員が解雇されています。つまり、何人もの教員が、理事長の肝煎りで大学に招聘され、数年後に、理由は明らかにされずに解雇されているのです。姉妹校関係で招聘されたM講師およびE講師、また、第二外国語の教員であったL講師と、外国人教員がここ3年間でやつぎばやに解雇されています。日本人では、元文部官僚のO教授が解雇されています。同教授の場合、依願退職という形にはなっていますが、実質的には解雇でした。3年間の勤務で教授は大学を追われました。また、類似の例としてI講師の「退職」は記憶に新しいところです。同講師の場合も3年間でした。いずれも理事長が強く要請して着任した教員ばかりです。


組合が求めるもの


そもそち外国語学部総説の理念はグローバルな視野に立つことが根底にあったはずです。法人側はたしかにそれまでに十分話し合ったとしていますが、オリンガー氏は一貫して「解約通知書」は誤解に基づいていると主張しています。主張の違い、あるいはことばの行き違いを話し合うことなく、いきなり権力を振り回すことはこの理念からはなはだしく逸脱しているといわざるをえません。今や北陸犬学も数多くの外国人が働き、学んでいます。さまざまな対立が悲劇を生み出しいる現代社会で、一方的な「問答無用」式のやり方はまったくの時代遅れです。それどころか、危険でさえあります。

権力体質は一向に改まりそうもありません。学問の府に相応しい知性も冷静さも感じられません。相互の話し合いによる事実の確認もなく、組合ニュースで既報のように、学長の存在すらも無視して強行された今回の解雇は、過去数年間着々と体制固めがなされていた現体制の本質がどういうものかを白日のもとにさらしました。
外国人だけの問題ではありません。このような一方的関係のもとで、卑屈にならないでいられる人は果してどれだけいるでしょうか。権利なく、誇りなく、職業人、さらに大学を去った有能な教職員も少なくありません。大学冬の時代を迎えようとしているとき、これでは経営的な破綻を云々する前に、内部から形骸化してしまいます。まさに大学の危機です。

ことが決定的になる前に事態は改善されなければなりません。それゆえ、組合がオリンガー氏解雇問題を通じて法人側に求めているのは、第一義的にはオリンガー氏不当解雇撤回ですが、それだけにとどまらず、大学に働くすべての教職員がその能力を不安なく発揮できるようにするために、この体制を改革することなのです。法的手段にとどまらず、団交その他によって引き続き解雇撤回要求と民主化要求が同時になされなければなりません。皆さんの冷静な判断と熱い支持をお願いします。