北陸大学教職員組合ニュース274(2008.10.20発行)


教職員の犠牲の上に成り立つ 北陸大学の財政の豊かさ

不誠実きわまりない団交


 08年8月1日に、今年度の第3回団交が行われました。

 前回の第2回団交(7月2日)では席上、理事会側は、突如昨年度に比較して20%も減額した賞与を「特例措置」として支給することを発表しました。これに対して、私たちは資料を提示して、減額の根拠を示すよう主張しました。しかし理事会側は「目標が達成されていない」などと検証不可能な口実に終始しました。 但し、2点で合意し、次回第3回団交に協議を持ち越しました。その合意とは以下の点です。


@支給はあくまでも「暫定」であること、従って協議は継続

A次回第3回団交では「新資料を出す」(人事財経課長)、理事会側から「団交の日を連絡する」(同)


 7月17日、組合は2週間を過ぎているのに理事会側から団交開催日の提案がありませんでしたので、「団交催促書」を出しました。その後、7月23日に、理事会側からメールで「8月1日開催」が伝えられました。

 私たちは、団体交渉は文字通り「交渉」なので、前もって「新資料」が渡され、私たちが検討し、組合員の声を反映させ、これらを基に交渉に臨むという、本来の、まともな団交に変えるために、資料の提供を要求しました。


組合 「少なくとも、団交の数日前には資料を渡すべきだ。」

理事会「できない」(人事財経課長)

組合 「ならば(組合側が先に「団交申込書」に明記した団交テーマに対して、理事会側が団交テーマを取捨選択し、指定し、記述する)『団交回答書』を頂きたい」

理事会「出せない。決済ができていない」(人事財経課長)

組合 「資料の提示もなく、団交テーマも知らされない。これでは交渉にならない。誠実さが全く欠如している」


 今回の8月1日の第3回団交では、理事会側が「新資料」と称するものを配布しましたが、席上、いきなりの手渡しでした。内容の事前通知すらありませんでした。理事会には、まともな団交にする意志が見られませんでした。以下に問題点を列挙します。


問題点1: 当日・その場配布

 第1に、当日その場で初めて配布されたのでは、まともな協議、交渉ができません。

組合 「これをもとに前もって検討する時間がなかったので、今日は説明を聞くだけしかできない。こういう団交は不誠実きわまりない。」

 団交は、理事会の説明を聞く場ではなく、質疑応答−議論−交渉し、合意を求める場です。


問題点2: 「 経営は苦しい」はずなのに、理事長を含む一部理事のみ「昇給」

 第2に、配布された資料は、例年とほとんど変わらず、私立大学の一般的状況、全国薬学部分布(地)図、北陸大学と石川県等の年収比較、近畿大学新聞等でした。今回の団交では、本来なされるべき議論の方向は、理事会側が、なぜ20%の減額支給をするのかを財務諸表という労使共通の土俵に基づいて説明し、交渉し、組合員、非組合員の理解を得ることです。具体的な説明なしには、理事会の次の言辞はまともに受け取ることはできません。


理事会「経営は苦しい」

組合 「ならば、なぜ(理事長を始めとする)一部の理事のみが昇給したのか」


 私たちは、ほぼ一年前の2007年度第2回団交(11月15日)で、「理事長の昇給」があったのか否か、その事実の確認を理事会に迫りました。


理事会:「(その問いには)答えられない」(高倉理事)

教職組:「大学で働いている職員、特に理事は私的な事業で生活しているわけではない。公益法人だ。文科省から補助金を得て、税も優遇されている。極端に言えば1円たりとも私物化できない。6年間も教職員の給与は据え置かれている(実際、賞与は減額されたので給与総額は減収)。この中で自分だけを上げたということは事実かどうか」

理事会:「・・・」 (『組合ニュース』258号)


 「経営は苦しい」はずなのに、複数の理事が「昇給」しました。逆に教職員の賞与を次々と減額させ、給与たるや6年以上も据え置いたままです。しかもこの6年間、理事会は、毎年、毎回の団交で「今年は、給与改定案を出す」「年度末までに案を出す」と繰り返し約束しながら、すべて反故にし続けてきました。毎回の団交の軽視は言うまでもなく、これは理事会の根本姿勢としての組合敵視の現れです。


石川県労働委員会、「組合嫌悪」を指摘 北元理事長への『命令書』で

 組合敵視は、私たち教職員組合だけが主張しているのではありません。

 2004年4月、既設の法学部と外国語学部が廃止され、未来創造学部が創られました。教員はこの未来創造学部と、これも新設のセンターに配属させられました。この時、組合員の多数はセンターに配属され、授業担当から外された人々が続出しました。一方で、その分多くの授業を持たされた教員は、授業準備と研究時間の捻出に苦しんでいます。公的な第三者機関である石川県労働委員会が出した北陸大学・北元善朗理事長への『命令書』には組合敵視の視点が次のように記されています。


「これらの組合員の授業担当がなくなる理由についても、組合に対して明確に説明していないことからすれば、法人には、組合嫌悪の意思が依然として継続していた」(2007年4月23日)

「組合に対し、法人が敵対意識や嫌悪感を抱いてきた」(同)


問題点3: 北陸大学の財政状態は良好

 第3に「経営は苦しい」のではなく、「良好」であり、「蓄積」がある。教職組は、今日まで、様々な指標を挙げて、経営の豊かさを論証してきました。その典型例は、@人件費比率が全国平均より約10〜13%低い、 A理事会側の資料を基にしても、定員充足率が、開学以来一貫して、ほぼ常に1.00を越えている点です。

 理事会側は、こうした指標を前にしては、事実を否定することができず、団交などでは財政の「豊かさ」を随所で発言しています。以下に、理事会の「豊かさ」発言を、理事会自身が金沢地裁に提出した書類と、団交等での口頭説明で跡づけてみます。時系列に沿い、直近のものから列挙します。


@理事会が、田村、ライヒェルト教授の解雇理由で金沢地裁に提出した『答弁書』
「本件解雇が(両名の)勤務成績不良や非違行為などを理由とするものではないことは認め・・・財務状況の悪化を理由としているものではない」(08.. 15)

 「被告(理事会)は財政状況が逼迫している旨の主張はしていない」(同)


A団交や説明会での発言

(1)理事会「蓄積があることは間違いない」(中川専務理事、教学担当、07..25 教員懇談会及び教員職制説明会)

(2)教職組「8人を解雇しないと大学の存在があぶないという事態には至っていないのですね」
理事会「経済的な困窮は、今の時点ではない」(松村常務理事、労務担当、06..13、 第2回団交 理事会側と合意で録音する)

(3)財政状況は「良好である」(松村常務理事、労務担当、04.10.13、第5回団交、『組合ニュース』第219号)

(4)理事会「財政上、悪いということはない」(周理事、04..6 団交、『組合ニュース』第211号)


問題点4: 財政の豊かさー教職員の犠牲の上に       

 ここに引用された理事会の『答弁書』と発言の時期に着目します。それはとりわけ私立大学の「危機」が叫ばれている最中の2004年以降です。この時期も北陸大学の「経営は苦しい」のではなく、豊かなのです。それは中でも教職員の人件費比率の低さ、すなわち私たち教職員の犠牲の上に成り立つ「豊かさ」です。

 今回の団交ではこうした点を踏まえて、前回団交で合意した「暫定支給」から上乗せがテーマになるはずでした。しかし理事会は、初めから私大の一般状況を口にするだけで、個別北陸大学の具体的な財政の資料開示もしないばかりか、その口頭説明すらもせず、「苦しい」の一点張りに終始しました。一方では裁判所に、すなわち公の機関に対して「財政状況が逼迫している旨の主張はしていない」という文書を出しているのです。教育機関が二枚舌を使うのは許されることではありません。

 次回団交では、これらの点の追及を含めて「2008年度組合要求事項」(『組合ニュース』第272号に掲載)への回答を求めていくつもりです。すべての教職員の皆様の変わらぬ支援、協力をお願い致します。


お知らせ

 10月10日、薬学部教員会の席上、理事会決定して以下の件がトップダウンで伝えられました。「12月1日から、北陸大学付属太陽丘ほがらか薬局が開局され、教員を『出向』させる」。次回『ニュース』では、この問題の不当性を取りあげる予定です。