北陸大学教職員組合ニュース253(2007.8.13発行)



解雇無効、解雇権の濫用と判断


金沢地裁仮処分命令決定 −


 平成19810日、田村教授、ライヒェルト教授が申し立てていた仮処分命令が以下のように決定された。

1 債権者らが、債務者に対しいずれも雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。

2 債務者は、債権者らに対し、それぞれ平成198月から本案の第1審判決言渡まで毎月25日に限り35万円を仮に支払え。

3 債権者らのその余の申立をいずれも却下する。

4 申立費用は、債務者の負担とする。

 この決定は、両教授の申立をほとんど全面的に認めるものである。後述するように、解雇に理由がなく、解雇権の濫用であるから、解雇は無効という判断を示すものであった。北陸大学教授としての地位保全も認められ、石川県労働委員会の不当労働行為認定と救済命令に続き、俗に言う「全面勝利」である。


 金沢地裁は、まず、「事案の概要」において双方の主張から事実を認定し、そこから二つの争点を定めた。即ち、地裁が認定した争点は

1)被保全権利の有無(争点1

2)保全の必要性(争点2

であった。

 争点(1)に関し、地裁は以下のように項目ごとの判断を示した。

@ 職種限定合意:就職時に職種をドイツ語に限定する合意はなかった。事実、両教授が担当していたのはドイツ語だけではないから、ドイツ語科目がなくなったことは解雇理由にならない。

A 学部再編の必要性:大学は大学の自治の享有主体であるが、教員も教授の自由を享有する。したがって、担当科目の喪失等により解雇が余儀なくされるときには、その必要性と合理性が認められなければならないが、ドイツ語廃止の必然性は認められない。

B 解雇回避努力:期間の定めなく雇用している以上、解雇に際しては解雇努力を尽くさなければならない。それゆえ、大学法人はドイツ語を選択科目として残すこともできるし、また、これまでの本人たちの実績からすれば、解雇回避のために他科目の担当を検討すべきであった。大学法人は、他の科目担当はできないと主張しているが、疎明資料からは両教授が他の科目の適格性を欠くとは認められない。

C 手続きの正当性:解雇にあたっては、学部再編に際し、ドイツ語存続の可否やドイツ語以外の担当可能性について十分協議した上で、雇用確保措置を講じるべきであったが、十分な説明も本人たちとの協議もしていない。


以上のことから、金沢地裁は「本件解雇は、不当労働行為に該当するか否かを判断するまでもなく、客観的な合理性を欠き、社会通念上相当として是認することはできず、無効であるといわなければならず、本件申立における被保全権利は一応認めることができる」と判断した。


地位保全も認める


 さらに、金沢地裁は、争点(2)について、両教授の講義/授業担当や研究活動は大学法人が保障すべき雇用契約上の権利または利益に該当する、と判断し、結論として保全の必要性が認められるとした。これによって研究室等の利用も事実上強制する効果が認められ、また、北陸大学の教授の地位にあることを前提にした研究発表活動も可能になるとした。

 賃金仮払いに関しては、大学法人が、退職金を支払ったから仮払いの必要はないと主張したことに対し、両教授の「退職金」供託に配慮し、生活に必要な限度分が認められた。



法人理事会は猛省を!

社会の認定および判断を受け入れ、早急に大学運営の正常化を!


 組合側の見解では、薬学部における不当労働行為事件と共に、本件の解雇も、法人理事会にとってだけ都合のよい、不当な理由による一方的な解雇であった。公的な判断は、一方的な都合や方針だけでは、客観的合理性が認められず、解雇はできない、ということを示すものであった。石川県労働委員会の命令に続き、金沢地裁においても組合の見解は全面的に認められたのである。法人理事会はこの事実を真剣に受け止め、このような社会の通念に反する事態を生み出した経営体質を早急に改革すべきである。それなくしては、学生募集のために教育重視を如何にアピールしても、地域社会の理解と信用を得ることはできない。