北陸大学教職員組合ニュース249号(2007.6.7発行)
不当解雇差し止めを訴える
北陸大学は、平成19年3月31日に田村光彰教授とライヒェルト・ルート教授を解雇しました。解雇理由は「担当する科目がない」から、と称しています。しかし、実態は、解雇するために、作為して担当科目をなくしたのです。
何のために解雇?
経済的理由ではありません。北陸大学の経営状態は安定しています。
本当に科目がないから?
両教授はドイツ語を担当していました。ドイツ語には多くの受講生がいました。しかし、法人理事会は独断的な理由をつけてドイツ語をなくしました。
それじゃ、やはり担当科目がないのでは?
そんなことはありません。北陸大学では、多くの教員がいろいろな科目を担当しています。その中には両教授の担当できる科目も含まれています。実際、両教授はドイツ語以外も担当していました。北陸大学だけではありません。現在では、専門は「越境」し、多くの大学で教員の専門領域が拡がっています。
したがって、「担当科目がない」ことを理由とする解雇は不当解雇以外の何ものでもありません。この春、薬学部教員に対する不当労働行為に関して、石川県労働委員会から全面救済命令が出ました。若者を教育する大学で、このような不当労働行為、不当解雇は、法的にも道義的にも絶対に許されません!
支援する会発足集会開催
「北陸大学田村教授とライヒェルト教授の解雇撤回訴訟を支援する会」が正式に発足しました。平成19年5月27日(日)に石川県金沢勤労者プラザで同会の発足集会が開催され、参加者により、趣意書、会則(目的と活動内容を含む)、13名の世話人が決定されました。集会には、教職員組合員、OB、外・法学部卒業生、当事者の友人、市民の方々など、約30名が参加しました。氷山の一角という言葉がありますが、私たちは、水面下にはさらに無数の支援者が存在していると確信しています。会場では、解雇までの経過報告や当事者挨拶、諸決定の後、多数の方々から、両氏の業績、教師としての人柄への賛辞と、言葉に尽くせない無念さに対する熱いメッセージが披露されました。当日ご参加の金沢市会議員森一敏氏は、ご自分のブログに次のようにお書き下さいました。
北陸大学の田村光彰さん、ドイツ語のルート・ライヒェルトさんの二人が、3月をもって、大学から解雇通告を受けました。私が20年来おつきあい頂き、市民運動の仲間として、ドイツの戦後補償の研究者として、ご著書の献呈など多くのご教示も受けてきた田村さん。彼は、家族経営に等しい北陸大学理事会の専横に対し、1995年に大学の自治、教授の自由、教職員の権利擁護のために教職員組合を先頭に立って組織しました。以来、大学運営のおかしさを告発し、闘い続けてこられました。お二人への解雇通告は、法的にも何ら説明できるものはなく、一連の不当労働行為の総決算として、組合つぶしを意図した不当解雇と言うより他はありません。
今日(昨日)、裁判闘争に立ち上がるお二人を「支援する会」が結成されました。私は、共同代表世話人の一人をお引き受けしました。教育が自由化され、教育産業の利潤追求の手段へと変質が進んでいます。その最も典型のような北陸大学の暴挙は、大学教育の正常化の立場からも許されてはなりません。私も、共に闘う思いで応援します。
支援参加呼びかけ人は次の人たちです。
相沢一正 潮 昭太 大瀧敏夫 岡田 豊 岡野浩史 川井孝幸 桐山典城 佐倉直樹 櫻田芳樹 島崎利夫 鶴園 裕 中崎温子 林 敬 林 秀樹 半沢英一 松井 潔 三宅祥隆 森 一敏 山口 隆 吉本武士
趣意書と会則を後掲します。
北陸大学の現状に、誰が責任を負うべきか?
私たちはもう一度訴えたいと思います。外国語学部及び法学部廃止決定後4年間に、先ず法科大学院の設立に失敗し、次いで理事会・河島学長主導で設置された未来創造学部では、年々、地元社会からの入学生を減らしている現状があります。その惨状たるや外国語学部・法学部の2学部時代の比ではありません。同時に経営最優先の方針から薬学部の入学定員の大増員を行いました。これも、3年計画で実施された薬剤師国家試験合格率100%達成計画の失敗から判断すると、その帰趨は将来的に予断を許しません。場合によっては取り返しのつかない大失敗になりかねません。大学をこのような危機に陥れたことは運営方針の誤りです。このような大失敗、大失策は教学の努力の問題ではなく、経営方針の問題であり、それには必ず責任者がいるはずです。この大学経営の大失敗の責任の所在を曖昧にしたまま、経営方針決定に無関係な一部教員が、何故、犠牲を強いられなければならないのか!これは、外国語の「特化」や、「担当科目がない」以前の根本的な問題です。
解雇が正当か否かの争い以前に、問われなければならないことは、すべてのことを独断的に決定した経営者の責任です。法人理事会は自らが招いた大失敗の経営責任を組合員教員の解雇問題にすり替えようとしています。薬学部での担当外し問題も含めて、法人理事会は、教員個々人へのハラスメントと組合攻撃により組合との対立の図式を際立たせることによって、自らの責任問題を隠蔽し、本学の抱えている根源的な責任問題から目を逸らせようとしています。今年3月,外国語学部,法学部最後の卒業式の告式辞で,最後の卒業生を前に,理事長,学長は共に,両学部が廃止されることについて一言の言及もありませんでした。しかし、学部消滅と後身学部の不振により、多くの卒業生の心も深く傷ついています。理事会は、本学すべての教職員だけでなく、本学を母校とする彼らに対しても責任を免れません。
「支援する会」会員募集:支援の輪を拡げよう!
教職員組合は、二教授支援を最重要課題の一つと位置づけています。組合員、非組合員を問わず、どうぞ「支援する会」に入会またはご寄付をお願いします。なお、入会者氏名(非公開扱いなど)は、担当者が厳密に管理いたしますので、ご安心下さい。
入会及びご寄付の手続きについては添付の郵便振替口座用紙をご利用下さい。年会費は1,000円です。できればその他にご寄付をお願い致します。郵便振替用紙に必要事項(入会・ご寄付のみ、氏名公開可・非公開など)をご記入の上、お振込みください。
また、会員募集及び募金方法と活動内容などは、下記の「田村・ライヒェルトを支援する会」ホームページにも掲載されています(組合ホームページからもアクセスできます)。
ホームページURL: http://www.tars.jpn.org/
窓口メールアドレス pm@tars.jpn.org
HPが検索エンジンでヒットするようになるまでにはもうしばらく時間がかかります。
みなさまのご理解と熱い支援をお願いいたします。
(趣意書と会則)
北陸大学田村光彰教授とライヒェルト・ルート教授の解雇撤回訴訟を支援する会
発足趣意書
平成19年3月30日、学校法人北陸大学は田村光彰、ライヒェルト・ルート二教授の3月31日付「退職」を発令しました。この退職は本人の同意のない「解雇」です。
二教授はそれぞれ法学部と外国語学部でドイツ語とドイツ/EU事情等の授業を担当してきた教授です。法人理事会は二人をドイツ語教員として一括りし、新学部(未来創造学部)では外国語教育を英語と中国語に「特化」したから担当する科目がない、という理由で解雇を強行しました。
しかし、このことは、田村教授の場合は正当な理由になりえないのは明らかです。彼はドイツ語の他に法学部教授として「地域研究U(欧州)」やゼミを担当してきました。また、社会的にも人権教育者として、活動的な市民運動家として高く評価されています。学問的労作には、10冊の著書(翻訳書を含む)、及び『論座』、『エコノミスト』、『軍縮問題資料』等の全国誌掲載論文があります。したがって、EU研究者として、人権・平和教育者として、未来創造学部でも彼が担当し得る科目は複数存在します。
ライヒェルト教授の場合は、彼女は、法学部開設時の登載教員として招聘され、以来、働き盛りの14年間を全学のドイツ語及びドイツ文化の教育に献身してきました。さらに、彼女は日本独文学会教育部会での活動等を通じ、日本人ドイツ語教員と日本のドイツ語教育のレベルアップにも貢献してきました。法人理事会はあらかじめ薬学部でも開学以来開講されていたドイツ語を消滅させましたが、彼女には何の責任もない理由による使い捨て同様の解雇は、国際的にも信義に反する行為です。
北陸大学は財政的には極めて良好で、解雇の必要はまったくありません。それゆえ、このようにしてまで二教授を「解雇」した真の理由として唯一考えられることは、民主的な大学運営を求める教職員組合に対する積年の敵視と憎悪です。田村教授は常に教職員ないしは教職員組合の先頭に立ち、法人理事会の独断強権的運営を批判し、明朗且つ民主的な大学運営と自律的な教育を求めてきました。独断強権的運営は教員と教育を萎縮させるばかりか、過去においても二度に渡って文部省(当時)の行政指導を受ける等の不祥事や不明朗な経営を招来してきたからです。
田村光彰教授とライヒェルト・ルート教授は、平成19年3月16日に金沢地方裁判所へ地位保全の仮処分を申し立てました。さらに二教授は、この申立の後に解雇無効確認訴訟を予定しています。私たちは、二教授解雇を不当解雇と認定し、広く社会の理解と支持の下に物心両面から二人を支えていくために、二教授の申立並びに解雇撤回訴訟を支援する会を発足させたいと思います。私たちは、この支援が本人だけでなく、社会の中に生きる大学の未来を切り拓くことに繋がるものと確信しています。
平成19年5月27日
発足準備委員
大瀧敏夫 桐山典城 川井孝行 佐倉直樹 櫻田芳樹
島崎利夫 鶴園 裕 林 敬 林 秀樹 半沢英一
松井 潔 三宅祥隆 森 一敏 山口 隆
会則
1 名称 本会は「北陸大学田村光彰教授とライヒェルト・ルート教授の解雇撤回訴訟を支援する会」(略称:「田村・ライヒェルトを支援する会」)と称する。
2 目的 本会は、北陸大学が解雇を発令した田村光彰教授とライヒェルト・ルート(Ruth Reichert)教授の解雇無効確認訴訟を支援することを目的とする。
3 活動 本会は目的を達成するために次の活動を行う。
(1)仮処分申立を含めた訴訟費用支援のために募金活動を行い、支援金はすべて訴訟費用支援と会運営に充てる。
(2)社会の理解と支持を求めるために、北陸大学の卒業生を始め、広く社会に向け広報活動を行う。
(3)公正な裁判を求める署名活動を行う。
(4)裁判を傍聴する。
(5)随時報告・支援集会を開催する。
(6)会報を発行する。
(7)その他、本会の目的達成に必要なこと。
4 会員 会員は、本会の目的に賛同する個人及び団体とし、会員名は公開または非公開とする。会費は年額1000円とし、訴訟費用支援と会運営に充てる。
5 世話人会 本会の運営のために共同代表世話人及び世話人を選出し、世話人会を構成する。
6 運営 本会の活動方法及び支援金の使途、その他会の運営に必要なことは世話人会の協議で決定する。
7 事務局 本会に事務局をおく。事務局は会の庶務を担当する。
8 会計
(1)会員の中から会計責任者1名を選ぶ。
(2)会計年度は4月1日から翌年3月31日までとし、年1回会計報告をする。
(3)会員の中から会計監査1名を選ぶ。
9 附則1 本会は2007年5月27日に発足する。
附則2 本会の事務局を金沢市末町9−24におく。
支援会員募集
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