北陸大学教職員組合ニュース243号(2007.3.22発行)




不当解雇に断固反対する

平成19221日に、理事会は、教育能力開発センターの田村教授、ライヒェルト教授に解雇を通知した。北陸大学教職員組合は、38日付でこの大学当局の暴挙に抗議書(後掲)を提出し、直ちに不当な解雇を撤回することを要求した。また、平成19316日には、田村、ライヒェルト両教授の「地位保全仮処分命令申立書」を金沢地方裁判所に提出した。組合はこの不当解雇事件について、大学当局と正面から徹底的に闘う方針である。


不当解雇のプロセス

北陸大学理事会の組合攻撃の手順は、

@ターゲットとした組合員教員を教育現場から排除する。具体的には、 a) 教員の授業科目をなくし、講義の機会を奪う、 b) 担任外しにより、アドバイジー学生を持たせない、 c) 入試、地区懇談会などの業務から外す、など。

A「当該教員に担当すべき科目がないので、雇用が終了する」と予告する。

B解雇を通告(整理解雇)する。

というプロセスで行われることがはっきりとしている。

先ず、@を強行するために、教育の根幹となるカリキュラム作成、教学事項の決定権を教授会から実質奪い、理事会が掌握した。それから非民主的な大学運営を極限にまで推し進め、授業担当人事から、教学事項に至るまで、教育者にあらざる者が介入し、標的とした教員の科目をなくして、教育現場から締め出したのである。事実、外・法学部廃止と未来創造学部新設という組織改編に乗じて、理事会の関与の下に未来創造学部のカリキュラムが密室で作成された。

ステップAでは、昨年3月に8名の組合員に「担当授業がなくなるので、来年3月で“雇用関係が終了”する」と口頭で伝達し、その後、「解雇とは言っていない」とか、「平成194月以降には、大学にいられない」などの言い回しで、陰湿に、執拗に、自主退職を迫った。「辞表を提出させる努力(ハラスメント)」が大学の行う唯一の「整理解雇の回避努力」であった。

ステップBでは、就業規則第21条の整理解雇条項を適用し、解雇を完結した。

このように、平成159月の組合員教員の担当科目の抹消を開始点とし、平成192月の解雇通告Bを終着点とするシナリオに沿って組合攻撃が行われたのである。3段階を経由したのは、手続き的に一見合法を装うアリバイづくりであるが、しかし、このアリバイは至る所でほころびている。


道理のない解雇理由

昨年3月に事実上の解雇予告をしたときから、8名の内の英米語教員については、「外・法学部終了に伴い担当科目がなくなる」という解雇理由には無理があった。担当科目は未来創造学部にも薬学部にも存在するので、「担当科目がない」ということは、単に「担当させたくなかった」というにすぎないからである。

それゆえ、大学法人は、予定の解雇時期が迫ってきた昨年12月に「担当できる科目がある」教員を除外して対象者を4名に絞らざるを得なくなり、この4名に対し退職条件を示して331日の「退職願提出」を迫った。そして、この4名の内の法学科目担当教員が他大学に転出(薄氷を踏む思いの転出)するために勧奨退職に応じると、残った3人を一括りにして「ヨーロッパ系外国語教員」とみなし、今年28日の団交では、大学法人は初めて第二外国語の教員に絞って解雇理由を述べた。しかし、サッカーコースの設置に象徴されるように、未来創造学部の全体の方針がはっきりしなくなってきた中で、何故外国語の「特化」だけが突出するのか、という問いには、理事会側はとってつけた言語情勢の説明以上に答えることができなかった。

今回ターゲットとされた田村教授は25年間、ライヒェルト教授は14年間、ドイツ語及びヨーロッパ事情、関連ゼミ等の分野で真摯に本学の教育に尽くし、北陸大学を根底から支えてきた。しかし、大学法人は、カリキュラムの中からドイツ語、スペイン語、フランス語等のヨーロッパ系言語を消滅させた。理由は語学を英米語と中国語に特化するから、というものである。そして、この特化の理由は法人理事会の方針だから、というものである。この「特化」ということばを理事会は「排除」の意味で用いた。しかし、グローバル教育を標榜し、英米語を主言語に据える以上、教育的にも学問的にも、政治・経済・文化的に関連の深いヨーロッパ諸国言語を排除する理由はない。「特化」という理由は単に「排除」の理由に使われたにすぎない。この「特化」は学問的・教育論的な裏付けのない政策的「方針」であり、私立大学といえども最高学府であるからには法人理事会が特定科目の排除を目的に教育内容に介入することは許されない。

道義的に見ても、学部開設時に登載する必要があって来てもらった教員を、方針が変わったと言って任期半ばで使い捨てることは大学のすることではない。労使慣習から見ても、この解雇は判例が確立している整理解雇の4条件(後掲の抗議書参照)のすべてを満たさない不当労働行為であることは明らかで、その違法性を隠蔽することはできない。

その後、221日には、大学法人は2名に対し解雇を通知し、1名を退職に追い込んだが、そもそも、これら3名の教員を第二外国語教員として一括りにすることにも無理がある。特に田村教授の場合は、25年前の採用時こそドイツ語担当講師として採用されたが、その後、ドイツを中心にEU事情に精通し、『エコノミスト』や『論座』などへの掲載論文の他、ヨーロッパ現代史・現代事情に関する著書や翻訳も多数ある。法学部においては、政治学科の所属の教授として、ヨーロッパ地域研究や国際政治、及び関連のゼミ等を担当した。したがって、未来創造学部の科目の中にも担当できる科目は存在している。これに対して、数次の団交における法人側の答えは、おしなべて採用の時がドイツ語担当だったと言うのみで、法学部教授会も認めたその後の業績と教育実績を一切無視する答えであった。

 解雇通知書には、両教授の解雇理由は、「平成19年度以降ご担当いただく科目がないことが確定いたしておりますので」と書かれている。解雇通知後初めて開催された平成1939日の第9回団交で、組合は、改めて「ご担当いただく科目がない」教員の中で、何故8名の組合員教員に対して、1年前に「雇用関係が終了する」と伝えたのか、選ばれた根拠を質した。次に、昨年12月になって、当該8名の中で、何故4名に対して平成19331日で条件付の退職を通知(口頭で)したのか、そして「ご担当いただく科目がない」状況にある教員が多数いた中で、どんな特別の理由で田村教授とライヒェルト教授の2名が解雇となるのか、を質した。しかし、労務担当理事からは、いずれについても明確な回答はなされなかった。

両教授の教育活動に問題はなく、大学は財政的に整理解雇を必要とする状況にはない。このような解雇は人権侵害の最たるものであり、家族を巻き込む非人間的な扱いである。今回の解雇通告は、専横的大学運営に批判的な教員と正当な組合活動とに対する理事会の執拗且つ計画的な報復である。真摯な教員に対する酷い仕打ちであり、それは理不尽であり、全く道理がない。道理ない解雇を強行するような大学は、必ず世間から見捨てられる。理事会は、法廷事件として争う以外にない状況へと組合員教員を追い込む方針を選択したが、志願者状況を考えれば思考停止の暴挙としか言いようがない。民主化運動が理事会の思惑に合わないにせよ、またいかに「組合憎し」といえども、理事たる者には適切な判断力が必要であり、道理のない強権発動の大学運営では、大学をいっそう窮地に追い込むことになるだろう。


人を活かした教育計画の再構築を

繰り返すが、今回の解雇問題の出発点としてつくられたのが新カリキュラムである。「文科省へ届け出た新学部カリキュラムは変更できない」と学長は頑なに主張し、平成15年度以降、その主張は一貫していた。だが新学部3年目の今年度、完成年度を待たずして、スポーツコースが新設された。これに伴い新たな科目がつくられた。即ち、カリキュラムは変更できることを示した(組合ニュース239号)。今回の新コース設置とカリキュラム変更は、新学部創設の当初の教育計画の失敗、少なくとも部分的な破綻を認めたことになる。その責任問題にはここでは敢えて触れないが、要するに、大学が方針変更すれば、ドイツ語もスペイン語も復活開講できる。文科省への手続きは大幅に緩和されていて、現にある人材をいくらでも活かすことができ、そのための変更に文科省の認可も必要ないのである。「人のことを考えずにつくったカリキュラム(河島学長)」を変更して、「人のことを考えて教育計画をつくる」ことは、つくる意思、心さえあれば、直ちにできることなのである。今、まさに、その心が求められている。

ところで、前号でも言及したように、新学部の問題は組合員教員排除だけではない。外・法学部廃止と未来創造学部創設の過程で、多数の組合員教員に「担当科目なし」の状況をつくり、教育能力開発センターへ配属させた。そして、新学部の「人のことを考えずにつくったカリキュラム」に最も相応しい「人選」が行われた。ところが新学部初年度教員24名中、この3月の退職予定者を含めるとついに過半数を超える13名が完成年度前の3年以内に退職した。外・法学部から選ばれて配属になった教員は19名であったが、完成年度まで残るのは9名に過ぎない。通常、新学部設立において、完成年度以前に登載教員が辞めることは、余程の理由がないと道義的にも認められない。本学には、新学部の登載教員さえもが辞めることになる理由、特別な環境がある、と言える。新学部として異常であり、大学として異常であることに間違いないが、その特別な環境とは、その根源とはいったい何であろうか。それとも、理事会の人選が間違っていたのであろうか。何れにせよ、新学部は人的にも破綻している。教員配置を再考する時期であり、またカリキュラムを再構築する時期である。

最近、どこかで「人間はタフでなければ生きてゆけない、やさしくなければ生きる資格はない」との言葉をきいたような気がする。今こそ人を排除するのではなく、人のことを考え、一人ひとりを大切にし、北陸大学のもつ人的資源を全面的に活かすべきである。民主的な教育・研究の環境をとりもどすべきである。それをしなければ、大学人として生きる資格はない。


38日に、組合は、「解雇通知に対する抗議と解雇通知撤回要求書」(別紙)北元理事長に提出しました不当な解雇撤回を実現するため、組合は断固として闘います。どうぞ皆様のご支援をお願い致します。




組合定期総会のご案内


      日時  322日 18:30

      場所  薬学キャンパス 202PN


 ○ 欠席される方は必ず委任状をご提出下さるようお願いします

 提出先は林または佐倉のレターボックスか最寄りの執行委員でも結構です



(別紙)


北陸大学教職組発175

平成19年3月8日

学校法人 北陸大学

理事長 北元 喜燗a


北陸大学教職員組合

執行委員長 林 敬



解雇通知に対する抗議と解雇通知撤回要求


一 北陸大学教職員組合員田村光彰教授に解雇を通知したことに対して厳重抗議する。

二 同組合員Ruth Reichert(ルート・ライヒェルト)教授に解雇を通知したことに対して厳重抗議する。


三 上記2名の当教職員組合員の解雇は、不当な解雇であるから、直ちに撤回することを断固要求する。


理由説明

一 教職員組合と大学法人の交渉過程からは、大学法人に経済的な人員整理の必然性があるとは認められません。

二 当教職員組合は平成18年4月6日に8名の組合員(教育能力開発センター所属教員)に対する「雇用関係終了」通知(口頭)に関する質問書を提出して以来、合計7回の団体交渉において質問に対する回答及び該通知撤回を要求してきました。この交渉の過程で、当組合は特に6名について撤回要求の理由として

@ 未来創造学部及び薬学部のカリキュラムが作為的に作成され、その結果当該教員の担当科目が消滅したこと、及びカリキュラムは追加変更できること

A 外国語学部及び法学部における授業担当実績から未来創造学部の科目を担当しうること

などを主張してきました。しかし、大学法人理事会はそれに対して合理性のある回答を示していません。このことは解雇回避努力義務の放棄です。

三 解雇通知書には、等しく「平成19年度以降ご担当いただく科目がないことが確定いたしておりますので」と、解雇理由が記述されています。しかし、この理由は、上記@とAに合理性のある回答を示さない以上、当該2名に当てはまるとは言えず、被解雇者選定に合理性が認められません。

四 法人理事会は、組合の主張に答えないまま、平成18年12月6日に上記8名のうち4名について、明確な理由を示すことなく、条件を付けて平成19年3月31日付けの退職を通知(口頭)しました。しかし、当教職員組合が要求してきたものは退職条件ではなく、上記撤回要求理由による教育職員としての職場確保です。大学法人が雇用を継続しようとしさえすれば、授業担当が可能であるからです。当教職員組合は、職場確保が何故困難なのかについて、法人理事会からまだ回答を得ていません。したがって、整理解雇に関する協議がまったく不十分なまま解雇が通知されました。

五 上記のように、今回の解雇は、1.人員整理の必要性、2.解雇回避努力義務、3.被解雇者選定の合理性、4.手続きの妥当性、のいずれの点においても極めて不十分です。ゆえに、今回の解雇は明白な不当労働行為と認められます。