北陸大学教職員組合ニュース240号(2006.12.27発行)
6年制薬学部担当外し問題
石川県労働委員会審問報告― 5
12月12日(火)、石川県庁において、県労働委員会の第2回審問が行われました。当日は田端講師、荒川講師の2名が証人尋問を受けました。それぞれ証人宣誓後、担任外し、授業担当外し、6年制薬学部担当外しや大学院担当外しに至る経緯が組合側の弁護士からの主尋問と証言によって公にされ、その不利益取扱の不合理さが訴えられました。担当外しを受けた当事者が学長から聞いた理由説明が、法人側から提出されている答弁書や主張書面の内容と異なるなど、事実関係で大きく食い違いを見せているにもかかわらず、反対尋問では法人側弁護士からは、その食い違う部分についての問いかけは全くなく、その事だけでも法人側の記述が事実とは異なることを示唆していました。
さて、来年1月17日は河島学長が被申立人代表として証人尋問を受ける審問日です。大量の証拠を組合は労働委員会に提出済みですが、上述の矛盾点もあることから、当日の学長の証言や対応が注目されます。
学部長は薬学部教授会で説明不能!
労働委員会審問日の夕刻に第11回薬学部教授会が開催されました。前年度は6年制薬学部設置準備委員会が決定した事項は報告事項としていましたが、今回の教授会開催案内では「平成19年度薬学部授業担当教員及びコーディネーター案について」が協議事項としてあげられていました。薬学部の「3教員外し」が実行されてから、薬学部教授会における初めての協議ということになります。配付資料によれば、佐倉教授、田端講師、荒川講師は次年度の6年制薬学部の科目から実習を含めて外されています。この3人の組合員教員担当外しについて団交で質問したことはすでに『教職員組合ニュース』(230号)等で報告済みですが、法人理事会は、この件は教育問題であるからということで交渉に応じませんでした。したがって、教育の場ではどのような議論があり、その結果どのような理由で3人の担当を外したのか、が注目されるところでした。しかし、薬学部教授会において教学の責任者の一人である学部長(兼副学長・理事・6年制薬学部設置準備委員・人事委員)から、責任ある説明は最後まで聞かれませんでした。
問題点は、これまでの団交や県労働委員会の議論で明確になっています。
@ 教育上何の落ち度もなく、これまで本学で30年以上の教育実績のある物理学専門の田端講師が6年制薬学部の物理学担当から外されて、専門外の教員が教えるのは何故か?
A 教育上何の落ち度もなく、大学院委員会の審査もパスしている荒川講師が6年制薬学部からも、従来の大学院からも外されたのは何故か?
B 教育上何の落ち度もなく、大学院委員会の審査をパスしている佐倉教授が6年制薬学部からも、従来担当していた大学院からも教授の中でただ一人担当を外された理由は何か?
これらのことが薬学部教授会で初めて質問されました。@に対する学部長の回答は、田端講師は「6年制担当教員でないから」というものでした。これでは回答になっていません。氏は自分が6年制薬学部担当教員でない理由について、教学の公式の場で初めて「2005年4月7日に、副学長も出席していた理事面談で、組合活動について理事長に謝罪しないと6年制から外すという話があったが、それが理由か?」と問いただしました。学部長は「そうではない」と否定しました。「それならば、どんな理由なのか?」と追及すると、学部長は「ここで答えることはない」と回答を拒否しました。何故答えられなかったのでしょうか?この点は県労働委員会も疑問に思い、「求釈明」により、6年制薬学部の教員配置基準を質しました。大学法人が県労働委員会へ提出した書証では、その基準をいわば「後出し」にしましたが、それが当初から確固たるものであれば、何よりも学部教授会で説明すべきことです。
AとBの問題についても同様に何故6年制から外されたのかが問題になるところです。一部教員を外すことに対する質疑が始まると、学部長は、協議事項となっていた担当教員とコーディネーターの議題から、「6年制の事項については報告事項であり協議事項ではない」として、教授会席上で協議事項から外しました。それに対し、授業の担当者や主任教授からも疑問の声が上がりました。教育現場では教育能力のある3教員が必要だ、という主張です。主任教授は、学長の説明では追加登載も示唆されたので、これまで発言を控えてきたが、教育上何の落ち度もない教員を外す理由は何なのか、またそれに答えられないということはどういうことなのだ、と疑問を述べられました。学部長の答えには、これからは専門性を持つのをやめようとしているところだ、という説明もありました。この発言の内容が本当だとすれば、本学の薬学部教育における根本の方針転換です。このような大問題をいつ誰がどんな理由で決めたのでしょうか?しかも、この学部の根幹に関して、学部の議論も合意もなく、3人の経験豊富な教員を外す背景として使われています。
理事会の教育への介入と不当労働行為が大学荒廃の根源
昨年来の6年制薬学部担当教員外しの問題では、担当教員としての適否判断の原案が「6年制薬学部設置準備委員会」によって作成され、3教員の登載教員からの排除決定が「理事会人事委員会」によって行われました。「6年制薬学部設置準備委員会」の構成員は、河島学長、周専務理事、中川専務理事、北野理事、大屋敷副学長、澤西学長補佐、浜辺事務局長、泉学務部長です。構成員8名中、5名は薬学の教育者ではありません。また「6年制薬学部設置準備委員会」構成員のうち5名(河島学長、周専務理事、中川専務理事、北野理事、大屋敷副学長)が「理事会人事委員会」を兼任しています。3教員の6年制薬学部担当外しと大学院担当外しの決定を教学側で主導したのは、理事である学長と副学長です。12月12日の第11回教授会に報告された来年度の授業科目担当者は、「6年制薬学部設置準備委員会」が決定したものですが、委員会での薬学部教員は副学長と学長補佐の2名のみです。今回の教授会は、大学にとって最も大切な教育事項の決定権を教授会から奪い、組織改編に乗じて理事会が組合攻撃を行なっている現実と手法が露わになった会議でした。
理事会が決定した担当外しの理由については、学内教員に説明されていません。当該教員にも合理的理由説明はなされていません。組合の説明要求に対して、団交では教育問題と言い、教学の会議では、今回の教授会が示すように、すでにどこかで決まったこととして質疑が拒否されています。これが現在の教学の場での実態です。薬学部における教員外し問題にしろ、教育能力開発センターの解雇問題にしろ、人の一生がかかっています。その人たちの必死の疑問に対して、北陸大学ではいったい誰が責任を持って答えられるのでしょうか?自分たちの排除を、いつ、誰が、何の理由で決めたのか?当事者には知る権利があります。理事会の説明責任回避、強権的な教育現場への介入、社会常識を逸脱する教員差別、不当労働行為が教育環境を荒廃させ、北陸大学の評判低下を加速させる根源と言えるのではないでしょうか?
第6回団交事項:解雇問題、給与および賞与問題、2規程(育児・介護休業及び停年後再雇用)問題については次号でお知らせします。