北陸大学教職員組合ニュース239号(2006.12.5発行)



第5回団交報告 整理解雇理由の根底に疑義

カリキュラムは、今、変更できる


 第5回団交は1020日に行われた。教職員組合は、冒頭、解雇要求に対する回答を求めた。法人理事会側は、前回団交で8人を確認したと言っておきながら、相変わらず解雇とも解雇でないとも言わず、今年3月の通告は「このまま行けば、来年331日をもって雇用関係が終了する」ことを知らせた、と繰り返すのみであった。これではこれまでの説明を後退させたばかりか、事実上の交渉拒否である。

 ところで、2003829日の団交で、いろいろな問題を含む新学部カリキュラムの変更要求に対し、河島学長は「カリキュラムは変えない」と文字通り突っぱねた。「新学部は新しい方針でやる」というのが理由だった(『教職員組合ニュース』197号)。そして、新学部のカリキュラムに担当する科目がない、というのが「雇用関係終了」の「理由」とされた。しかし、来年度からのスポーツコースの新設によりその方針が怪しくなった。カリキュラムは変えないということも根拠がなくなった。新しい科目が追加されたからである。以下、このことについて主な質疑の論点を略述する。

組合:(解雇通告された8人が残れるようになるために)大学はどういう努力をしたのか?

法人:最終的な解雇通告は出していない。今後の推移はわからないが、しかるべきときになれば、しかるべき結論を出す。少なくても確定している事情は、平成193月をもって雇用関係が終了することと、現在、未来創造学部に担当の授業がないということの2点だ。

組合:問題は、どういう努力をしたかというときに、例えば新しいカリキュラムを作るとか、アドバイザーをもってもらうとか、そういう具体的事実を一切示してこなかった。学長に何度も新しいカリキュラムを作るべきだと言ったが、我々に一切関係なくカリキュラムを決めて、発表したときは変えられないと言った。ところが、スポーツコースを創る、これは、カリキュラムは変えられるということだ。

法人:それは変えるのではなくて追加だ。

組合:じゃ、追加できるということか?「変える」のでなくてもよい、追加できるのか?

法人:コースの新設だから、そういうものが必要になった。

組合:要するに追加ができるということだ。そこを確認したい。これまで言ってきたことの根幹が結果的に嘘だったということになる。

法人:新しい人材を創るために、そういうものの新設があって、科目ができたのだから、今までの未来創造学部の学生像と別のものを創った。

組合:最低限こういうことになる。理由付けはどうであれ、追加は可能である、と。理事会の意志、あるいは学長の意志でカリキュラムは追加できることがわかった。

法人:コースとして。スポーツコースを新設したことは事実だが、カリキュラムは変更していない。コースに新設している。

しかし、法人側がどのように言葉を取り繕うとも、「新設のコースに、新たな科目を開設し」、「新しい科目を追加した」のであるから、カリキュラムを変更したのである。

「担当科目がないので解雇」という論理の破綻


『教職員組合ニュース』前号(238号)でも指摘したように、薬学部のカリキュラムは発足4年目に変えられていた。薬学部は1975年に開学したが、3年後の1978年に4年次に特別演習3単位や特殊関連科目7単位が追加され、必修専門科目についても科目名称変更などによる再編が行われたのである。また、その後もカリキュラムは何度も変更してきた。カリキュラムは状況変化に応じて変更必要なものであり、変更できるのである。そして、未来創造学部でも、状況によりスポーツコース新設が必要になり、新学部カリキュラムが4年以内でも変更できることが示された。「現行カリキュラムに担当科目がない」ことが「雇用関係の終了」にはなり得ないことを理事会自らが実証したのである。「科目がないから雇用関係が終了する」という論理は、先ずこの点で破綻している。


新学部、未来創造学部の人的な破綻


 教職員組合側は、次に、旧外・法学部からの新学部登載予定教員20名(当初)の内3年を経ずして約半数の9人(現在は10人)が退職した事実を指摘し、この点からも既にカリキュラム変更の時期に来ていることを主張した。法人理事会側は、それには答えなかったが、組合側からの「約半数もやめた人選をしたことに経営として責任を感じないかと」という問いには、「それぞれがやめていくのだから、どうして責任問題を出すのか」と応酬した。法人理事会が一方的に設定した基準項目により資格なしと判定された教員がいるのに対し、資格ありと判定された教員の約半数が退職した。この人的破綻という事態に対し、法人理事会は判定責任を回避する姿勢を示した。しかし、判定責任は免れるべくもなく、また、経営側の「雇用関係終了」の論理は、この点からも破綻している。


法人理事会は解雇回避努力をし、解雇を撤回せよ!


 この団交で、まずカリキュラムに科目を追加できることがわかった。教職員組合は、さらに、新学部カリキュラムを担当する教員が既に半数も大学を去り、カリキュラムを改正(変更)しなければならない状況、時期にあることを指摘した。不当な解雇を強行するのでなく現在の教員を活かす気があれば、例えばサッカーコースに、スペイン語やドイツ語などサッカー先進国の語学を含めることができる。理事会は解雇回避の具体的な努力を早急にすべきであり、組合は「雇用関係終了(解雇)」発言の撤回を改めて要求する。


給与改定交渉:法人側は本俸に人事考課制度導入を提示


 平成18年度給与改訂交渉は5月の第1回団交から要求していたが、今回の交渉で、法人理事会側はやっと年齢給、職能給、諸手当の一本化し、「職位責任給与」とすることを骨子とする「給与制度改革の概要」を提示した。これまでとの根本的な違いは、人事考課が本俸決定に導入されることである。「職位責任給与」は職位責任に基づく等級と、等級ごと賃金表から成り立つ、賃金決定方式は、第1段階で各人がどの等級に属するかを格付けし、第2段階で等級別賃金表のどこにランクされるかを、各人の能力を評価して決定する、というものである。賞与に関しては、「著しい業績・成果に対する報奨型(金額提示方式)」に変更するという提示であった。提示された経過スケジュール表によると、本俸改正は平成18年度に、賞与は平成18年の年度末から新制度に移行し、諸手当は平成19年から20年まで経過・代償措置をとり、平成21年度に廃止となっている。

 教職員組合側は、言葉のみの概要説明では実態がわからないので、組合大会で説明できるように具体的数字と標準モデルのシミュレーションを示すこと、近年機能不全に陥っている現行給与制度に満足しているわけではないから、協議の上で双方納得のいく制度改革をすること、昇級についても、5年、10年先が見えるようにすること等を要求した。遅れている給与改定交渉は、法人理事会の具体的提案を見てからのことになる。

 なお、資料として提示を要求していた、本学の人帰属収入に対する人件費割合の推移表によれば、平成10年度以来、多いときで43.5%(平成13年度)、少ないときで36.5%(平成17年度)、確定した平成17年度までの8年間の平均は40.76%であった。単純な比較はできないが、これは私学事業団が発表した平成16年度全国平均の52.2%(『月報私学』20062月号)を大幅に下回るばかりか、法人理事会が上限の原則として説明した45%(『教職員組合ニュース』190号、2003..7)をもかなり下回る数字である。年末賞与については、さしあたりこのデータをもとに交渉する。


6年制薬学部・大学院担当外し問題—報告4

石川県労働委員会第1回審問 岡野、佐倉氏証人尋問


 本年度から6年制薬学部がスタートしたが、既報のように3名の組合員教員(佐倉教授、田端講師、荒川講師)が6年制薬学部担当から排除され、また6年制薬学部担当教員でないことを理由として、現行4年制薬学部の大学院担当も外された。3教員は20年以上、本学薬学部で教育に携わってきた教員である。この担当外しについて、教職員組合は、6年制薬学部を文科省へ届出する機会に乗じた組合攻撃、組合弱体化を意図する不当労働行為と認識した。それゆえ、今年527日に、薬学部組合員に対する不当労働行為救済申立を石川県労働委員会に提出し、第三者を介して理事会側に担当外しの理由説明を求め、その不当性を訴える行動を起こした(『教職員組合ニュース』第234号、236号、237号)。

同委員会では2回の調査(87日及び928日)があり、審査計画が策定され、迅速化を目指して合意した日程に従い、審査が進行する。2月末には最終陳述書が提出され、平成193月末には裁定、命令交付が予定されている。この日程の第1回審問が116日(月)にあり、岡野前書記長と佐倉副委員長が証人尋問に立った。

岡野前書記長は、あらかじめ組合設立当初(1995年)年からの法人理事会による不当労働行為の歴史と組合敵視の事実、その他新学部設立や6年制薬学部届け出時の組合員外しなどについて陳述書を提出していた。午前中それに対する主尋問(90分)と反対尋問(90分)があり、午後には佐倉副委員長に対して、主尋問(60分)と反対尋問(60分)があった。組合側は3弁護士と土屋元組合執行委員長、三宅氏(日本私大教連書記局)など9名の補佐人が出席し、大学法人側は3弁護士と当日、急遽参加の要望が提出されて認められた河島氏、中川氏ら、補佐人5名が出席した。

岡野前書記長は、北元現理事長体制の強化に伴って教授会が形骸化し、労働条件が悪化したことなどが組合設立の背景となった、という証言から始まり、続いて外国人講師の不当解雇、事務職員の不利益不当配置転換、盗聴器事件、名誉教授称号の拒否、民主化運動への攻撃、などを証言した。さらに、最近の団体交渉における理事会の組合無視の実態を述べ、新学部と教育能力開発センター設置を利用した組合員差別、未来創造学部のカリキュラムを利用した組合員攻撃と排除の実態を証言し、今回の薬学部の問題が組合敵視と組合活動へのみせしめであることを主張した。また、大学の専横体制強化と抑圧に耐えかねて、多数の非組合員を含む教員が大学を去った現状を労働委員に訴えた。

佐倉副委員長は、2003年頃から薬学部においても、入学定員460名への大増員に伴うカリキュラム変更を利用した組合員教員の担当科目外し、2004年度のアドバイザー制度から担任制度への名称変更を利用した組合員教員に対する差別と攻撃から始まり、6年制薬学部への制度変更(文科省への届出)を利用した担当外しと現行4年制学部の大学院担当外しの経過を証言した。加えて、排除と差別の理由が労働委員会への申し立てまで説明されなかったこと、「答弁書」等によって初めて、そして次々に「後付けの不合理な理由」が持ち出された事実と経過、更にその担当外しの不当性について詳細に証言した。

被申立人側は、いくつかのポイントで反対尋問を試みたが、佐倉証人への反対尋問においては、6年制薬学部届け出前に行われたアンケートに対する佐倉証人の回答を問題にした。しかし、県労働委員会は、アンケートだけでは佐倉教授がただ一人「不適任となる特段の事情」が明らかでない、として大学法人に釈明を求めた。さらに、荒川講師についても、本年度助手から講師に昇格した人を除くとただ一人6年制担当から外されたことに対し、「他の講師以上の教員と比べて不適任とする特段の事情」の釈明が求められた。

 第2回審問は1212日(火)で、田端講師と荒川講師への証人尋問が予定されている。両人は既に不当労働行為の詳細な事実とその不当性を論証する陳述書を提出した。4名の証人が提出した陳述書は、合わせてA4用紙120ページを越え、また主張を裏付ける証拠資料も110件(数百ページ)を越える膨大なものになった。さらに万全を期すために、多くの組合員、元組合員のご協力をいただき、準備を進めている。

なお、第3回審問[平成19117日(水)]では、河島証人への主尋問(120分)と反対尋問(120分)が行われる。


 教職員組合執行委員会は、教職員その他の方々からのいろいろなかたちの励ましに感謝致しますとともに、今後も皆さまのご支援を心からお願い致します。