北陸大学教職員組合ニュース238号(2006.11.28発行)
第4回団交報告:8教員の解雇問題
第4回団交は9月26日に河島学長が全時間出席して行われた。最重要テーマは整理解雇問題であったが、交渉は全く進展しなかった。
冒頭、河島学長から『教職員組合ニュース』の記事に対する抗議があった。後述するようなやりとりの後、組合側は学長に対し4月に提出した組合の質問書に対する回答を求め、学長の回答があった。しかし、組合側は学長の回答を不満とし、再度、解雇を通告された8人の解雇撤回を要求した。松村常務理事の回答は、第一に、解雇問題解決のためにこれまでの交渉で積み上げてきた事実関係確認を後退させるものであり、第二に、解雇に関する理事会の決定手続きに疑念を抱かせるものであった。
理事会側主張:整理解雇ではない
それなら、何に基づく通告か?
今回の解雇問題での法人理事会の通告は、「授業科目がなくなるから雇用関係が終了する」ということであったが、これまでの団交を通して、その意味は整理解雇だと明言していた。そのことを前提にいくつかの根本的な問題が論議された。ところが、松村常務理事は今回の団交で、「我々は整理解雇という認識を持っていたが、顧問の先生(注、理事会の顧問弁護士)から、いや、ちょっと違うぞ、という話があった」ので、「雇用関係の終了」と言う、と説明した。しかしその一方で、通告を受けた教員が雇用関係の一方の当事者として雇用関係の終了に同意しなければ、雇用関係を打ち切るという説明があった。それならば、言われた側からすれば同じことである。事実、法人側は、「通告された教員は、来年4月以降は、大学にいられない」と明言した。これは解雇そのものであり、「雇用関係の終了」表現は当該教員に対する陰湿な言葉の弄び以外の何ものでもない。
また、解雇が避けられないとするなら、手続き上もしかるべき手続きがあるはずであるが、学校法人始まって以来の大量整理解雇であるにもかかわらず、「通告前に理事会が最終決定もしくは確認をしていない」ことが明らかになった。組合側の「いつの理事会で解雇を決定したか」という質問対し、常務理事は「解雇をいつするとか、誰々をするという決定的な話はしていない。但し、人事委員会において8人を確認し、面談(通告)させていただいた」と回答した。しかし、人事委員会には規程上「雇用関係の終了」を決定する条項は存在しない。理事会が整理解雇を決定したのでないとするなら、いかなる法的根拠による「雇用関係終了」通告なのか、改めて問題になる。
学長、抗議発言。さらに、新学部設置に関し教学側での主導およびブレーンストーミングの関連を否定
『教職員組合ニュース237号』の記事に対する学長の抗議は、「学長途中退席」記事に始まって、「心の痛み」記事、「ブレーンストーミング」記事、最後は見出しの「ドタキャン」表現に対するものだった。学長による組合ニュースへの抗議自体が支配介入に相当するが、今回はそのことを脇に置くとしても、「雇用関係の終了」通告に関する質問書を提出(4月)してから6ヶ月以上も誠意ある回答をしなかった学長が、5ヵ月後には解雇の恐れがある深刻な事態にある教員を前にして、「学長の心の痛み」などを述べて37分間にわたって抗議した。しかし、いたずらに摩擦を生む表現は避けなければならないが、『教職員組合ニュース』は組合員の感情的受け止め方も反映しなければならない。『教職員組合ニュース236〜237号』の記事もそれに該当する。学長に対する感情的表現は、学長を含めた法人理事会の、今年3月末以来の、遡れば外国語学部・法学部廃止を報告した2003年初頭以来の組合員および整理解雇対象教員に対する態度を、組合員が恫喝、不誠実、あるいは人権侵害と受け止めていることの反映にほかならない。学長が、団交の終了まで座席を立たなかったことは、この団交が初めてであったが、その四分の一以上を抗議に費やした。しかし、抗議よりもことの重みを認識すべきである。
加えて学長は、『教職員組合ニュース』に対する抗議の形をとってこれまでの事実関係に対する説明を否定した。1)学長が、新学部設置に端を発した今回の解雇問題を教学側で主導した、という記述について否定し、さらに、2)2002年10月の学長選挙直後に始まったブレーンストーミングと新学部設置準備委員会の関連について否定したのである。河島学長がこの二つを否定したことは、この団交の席が初めてのことである。しかし、解雇問題につながったカリキュラムなどを教学側で学長が主導したのでなくて、いったい誰が主導したと言うのであろうか、無責任極まりない発言である。2)に関する学長の説明は、およそ次のようなものであった。
学長:ブレーンストーミングをした後で、その構想を引き継いで新学部設置準備委員会でやったと書いているが、これは違う。ブレーンストーミングは独立している。ブレーンストーミングの委員が新学部設置委員会を作ったわけではない。
組合:(2003年)5月26日に理事会で決めて新学部設置準備委員会はできたが、その前に何もなくていきなり出てきたわけではないだろう。
学長:ブレーンストーミングは基本的にどういう風に考えるかをやった。それが結局新学部設置準備委員会につながっていって1学部2学科が良いのではないかとなってきた。
しかし、学長は2003年8月の団交の席上、自らブレーンストーミングから新学部設置準備委員会の発足にいたる経過を説明し、カリキュラムの追加変更要求に対しては、解雇問題に発展するのを承知で頑なに「カリキュラムは変えられない」と回答していた(『教職員組合ニュース』197号、2003.9.2)。今になって「教学側での主導」やブレーンストーミングと新学部設置の関連を否定するのは無責任である。
学長、担当外しの理由説明を拒否
河島学長の抗議の後、4月に教職員組合が発した質問書の項目について、質疑に入った。以下質疑応答の要旨を掲載する
組合質問1:(1月に示された学長方針にある)教育能力開発センターの活性化、センターは全学の教育に関わるという記述、および授業がなくなる教員の活性化を含む処遇措置という記述と、雇用関係終了は矛盾ではないか?
学長回答の要旨:授業科目がなくなるのではなく、未来創造学部に担当科目がないということだ。だから、これと雇用関係が終了するということは矛盾しない。活性化は個々の教員ではなく、センター組織全体の話。
組合質問2:未来創造学部は外国語学部・法学部を引き継いでいるのに、担当する科目も能力もある教員が外される根拠は何か?
学長回答の要旨:未来創造学部は外・法を受け継いだ学部でない。新学部では今問題になっている人には、科目を担当得しうる能力のある人はいない、なぜなら、新学部のカリキュラムにはその人たちの担当する科目がないからだ。今いる人のことは考えず、教育の内容をどうするかを中心に考えてカリキュラムを作った。
組合はこの回答に対し、現カリキュラムでも担当し得る科目があることを主張し、それにもかかわらず、何故、担当から外されたのかを問題にした。
組合:個人面談で担当できる科目を訊かれたのに対し、担当できる科目はあると答えているのに担当から外された。理由は何か?
学長:担当できるかどうかは大学側が判断基準を示し、判断すると言った。
組合:その結果外された。その理由は?
学長:団交の場では話さない。個人情報だ。私のところへ来てくれ。
組合:今説明してほしい。みんなに関わることだ。個人の話ではない。
学長:個人情報保護法の問題があって、皆さんはかまわなくても私がかまう。一対一ならいくらでも説明する。
結局学長は組合質問2については、団交席上での回答を拒否した。教職員組合は担当科目をもつことができるか否かの判断基準と個々の教員が担当から外された理由説明を求めたが、これに対して、学長は、公の場でその説明責任を果たす義務については、当事者の意思を無視して「個人情報保護法」を、自らを守る楯として持ち出し、説明を拒否したのである。
カリキュラムは人が作るものである。人が教育構想、学部構想を練る際に、頭の中から具体的な教員を一切排して、教育する人を前提にすることなく、教育内容と科目名のみで新学部構想を形成することは、普通はあり得ない。ところが河島学長は、「人のことは考えずに」教育内容を考えてカリキュラムを作った、と説明した。薬学部出身である河島学長は、学問分野を異にする新学部の教育内容を、「今いる教員のことを考えずに」カリキュラムの内容を決めた、と主張している。教育に当たる担当教員の顔を、現に存在する具体的な人の顔を思い浮かべることなく、先ず教育内容を考えてカリキュラムを作成し、次にその教育内容、科目に適当な教員を配置したら、大多数の組合員には担当科目がなかった、と強弁しているのである。普通の人が教育のことを考え、学部構想を練るときには、「人のことを考えて」教育内容を、カリキュラムを考えるものであるが、その意味で河島学長は普通の人ではない。
繰り返すが、カリキュラムは人が作るものである。人が思いを込めて、意識的に作るものである。学生を思い、教育に当たる教員を思い、いかに人を活かしていくかを考えることが教育の原点である。しかし、今、北陸大学で活きているのは排除の論理である。解雇を避けようと思えば、そのためにカリキュラムの選択科目を拡充することもできる。学部の目的がもともと「国際教養人」の養成を目指す(『With』2003.6.24)ものであったとすれば、通告された8人の教員はそのための担当資格を十分持っている。ところが河島学長は2003年9月の未来創造学部カリキュラムの発表以来、カリキュラムは変更できない、と頑なに教員の意見を受け付けなかった。河島学長がどんなに言い繕おうと、その結果、担当科目のない8人が1年後の解雇を通告された。また、理事会も理事会である。本学のカリキュラムの寿命はそんなに長くはない。薬学部は発足3年後に改正し、外国語学部と法学部は4年後に改正した。従って、現行カリキュラムに担当科目がないことは「雇用関係終了」の理由になり得ない。第4回団交において、新学部カリキュラム作成当事者である河島学長および法人理事会は、十分な担当資格のある教員を活かそうとする努力を一切しなかったことが、改めて示された。教職員組合はこの点からも整理解雇に断固反対する。
第5回団交および薬学部教員排除問題(不当労働行為申立)は次号で詳報!
第5回団交は、10月20日に行われました。席上、組合側から、整理解雇の根底に対する疑義が提起されました。また、給与改定交渉においては、法人側は本俸に人事考課制度を導入するという制度の大きな変更概要を提示しました。なお、次回(第6回)団交開催が11月30日(木)の予定で、年末賞与交渉と、重要な課題である給与体系変更交渉が開始されます。
石川県労働委員会の第1回審問が11月6日(月)にあり、6年制薬学部担当排除問題について、岡野前書記長と佐倉副委員長の陳述に対する証人尋問がありました。第2回審問は12月12日(火)、田端証人と荒川証人に対する証人尋問があります。また、河島学長に対する証人尋問は、平成19年1月17日です。詳細は次号でお知らせします。 << 組合ホームページ:http://hussu.jpn.org/ >>