北陸大学教職員組合ニュース197号(2003.9.2発行)



新学部のカリキュラムは、教職員の意見で変える気はない:

河島学長・中川専務理事が団交で言明



平成15年度第4回団体交渉が829日(金)に開催されました。これは組合が724日での開催要求をしていたものに応じたものです。団交には、今回はじめて河島学長が、また、中川専務理事が数年ぶりに出席をし、新学部および教員の配属について説明がありました。まず河島学長より、外国語学部・法学部を廃止し、「未来創造学部」とすることになった簡単な経緯説明がありました。おおよそ以下のようなものです。

20008月に理事会より教育改革基本方針を出したが、思わしい結果は出なかった。2001年秋には中国語関係の先生方と学部長を交えて学生の減少について相談した。20021月に理事会で、2002年の12月に外国語学部と法学部との存廃を決定する、という決定をした。そのあと学部に、そのことの説明に回った。その後、状況を見ていて、苦しい決断をしなくてはいけなくなると思ったので、200210月に学長のもとに何人かの教員に集まってもらってブレインストーミングを開始した。これは全学教授会でも言った。そして12月に2学部4学科での募集を停止することを理事会で正式決定した。そのあといろいろ議論を重ね、20035月に新学部の定員は200名とすることにした。また、「薬学部刷新準備委員会」、「新学部設置準備委員会」もスタートさせた。6月に「国際人養成学部」という名称の学部で文科省に書類を提出し、カリキュラムなどについて2度ほど指導を受けた。7月には学部名称は変えることになったが、カリキュラム・学科名などについては問題はないということになったので、新しい名称は未来創造学部ということになる。そして、新学部では、教授陣の数は28名を予定している。総合教育センターに配属となる教員は、現外国語学部・法学部の学生が卒業すると(新学部の設立後の3年後)、新学部あるいは薬学部の授業を引き続き担当してもらう教員と、授業のまったくなくなる教員と2種類ある。現在一人ひとりの教員と面接を行っているが、これから、それに基づいて選考委員会で決定し、最終的に人事委員会で決定する。新学部の学部長は、外国語学部・法学部の学部長を兼ねる。また、新学部の各学科に学科長を置く。

教職課程については、法学部では、ほとんど実績はなく、外国語学部では学生の全体から見れば少ないが、多少の実績はあった。しかし、新学部では、新学部の目的達成のために全力を尽くしたいので当面は教職課程は設置しない。」

 以上のような説明があった後、まず、桐山執行委員長から法人側に対して、今回の外国語学部・法学部の廃止について評議員会に諮ったのかという質問が出されました。これに対して中川専務理事から「諮っていない」という回答があり、「重要事項として必要と認めなかったということですね」という執行委員長のことばに対しては明快な返答がありませんでした。そのあと、いくつかの重要な点について組合側から質問が出されました。質問と回答の概要は以下のとおりです。



組合:「未来創造学部」という学部名称の文科省への提出はしているのか。また、いつごろ認可が確定するのか。

法人:提出はまだ行っていない。ただ、了解はもらえるという感触がある。9月半ばごろまでにはっきりするはずだ。

組合:カリキュラムは、密室で作られ、今回初めて一般の教員に公開された。そして、今、種々の欠陥を多くの教員に指摘されている。変更する気はないのか。また、今、示しているカリキュラムはすでに文科省に提出してあるのか。

法人:カリキュラムを変更する気はない。カリキュラムはまだ文科省に正式なものとしては出してはいない。しかし、今、示しているものでOKという内諾は得ている。それを変えることはしない。だいたい、変えたら失礼になる。

組合:法学部での説明会では、カリキュラムを作ったのは、河島学長、三浦学長補佐、園山外国語学部長、萩原法学部長という説明があったが、そのとおりか。

法人:そうだ。

組合:カリキュラムに明らかな欠陥があり、それを教員にも組合にも指摘され修正を求められても、カリキュラムを変える気はないのか。

法人:ない。新学部は、新しい方針でやるのだから、今の学部でこうだからと言ってもらっても困る。頭を切り替えてほしい。今日、団交の場に来たのは、理解をしてもらうために来たので意見を聞いて修正するために来たのではない。

組合:教職課程を作らない理由をはっきりさせてほしい。

法人:新学部が発展していくためには、まず社会に認知してもらわなくてはならない。成果を上げ、社会に受け入れてもらうためには、今は教職課程はいらない。

組合:教職課程があったら、なぜ新学部の教育の成果が上らないのか?

法人:新学部では新学部の成果を上げることに専念しなければならない。

組合:3年後に授業がなくなる教員が出てくるという説明だが、それは解雇ということか。

法人:雇用の終了ということだ。

組合:解雇ということか。

法人:そういうことになる。

組合:就業規則のどの項目が適用されるのか。

法人:第21条第7号(規模の縮小などの事由により勤務を必要としなくなったとき)を適用する。同条第8号(天災・事変その他やむを得ない事由のため、事業の継続が不可能となったとき)、同条第9号(その他前各号に準じるやむを得ない事情があるとき)も可能性としてはある。

組合:整理解雇と考えていいか。

法人:実質的にはそうなる。

組合:解雇という場合、その解雇の正当な理由がなければ解雇はできない。現在、財政状態は問題ないか。

法人:今は問題ない。

組合:新学部のカリキュラムでは、たとえば第2外国語が朝鮮語のみなので、このまま事が進めば、ドイツ語やスペイン語の教員が解雇されることになる。英語を専攻とする学生を置いた学科において、ドイツ語やスペイン語も学びたいという学生は当然いるし、高校生の目から見た学部の魅力という点でも、ドイツ語やスペイン語は残すべきだ。それでも、スペイン語、ドイツ語をカリキュラムに入れず、専任の担当教員を解雇する、というのはまったく正当性がない。さらに、財政的に問題がないと言っておきながらの解雇だから明らかな不当労働行為である。しかも、複数の教員の問題となるだろうから集団訴訟という可能性もある。今回のカリキュラムを変更なしで強行すれば、我々はそういう行為に追い込まれざるを得なくなる。それでもカリキュラムの変更はしないのか。

法人:しない。

 

 河島学長、中川専務理事はあとに別の用件がひかえているとのことで、団交開始後1時間10分ほどで退席しました。上にまとめたものはそこまでの法人側(主として河島学長、中川専務理事)と組合執行委員とのやりとりの要点を略述したものです。なお、河島学長に対して、退席直前に、平成14年度の業績評価書の問題点などについてきちんとした報告を出してほしいという要求が組合から出されたのに対して、学長からは、「そうします」という返答がありました。また、新学部のカリキュラムに関して、最終的責任は学長が持つのか、という質問に対して、学長は「はい、私が持ちます」と答えました。

 学長、専務の退席後、育児・介護休業規程の設置について法人側担当者から説明がありました。すでに、法律としては、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」が制定されており、今回の規程はそれを準用する形で作成されました。説明後、組合から幾つかの質問、提案がなされ、最終的に、組合は新しい規程に大筋同意し、法人側も提案を受け入れる形となり、合意となりました。この規程については、後日、薬学キャンパスでは組合に対して、太陽が丘キャンパスでは職場代表者に対して、説明が行われ、その後、組合、代表者の意見を付して、労働基準監督署に届出がなされることになります。

 次に、今年度の給与・賞与交渉に移ろうとしましたが、法人側から給与については、「現在、検討中で、年齢給について見直しを行っている。また、手当などについては、今までの機械的なやり方から成果主義に基づいて決めることを考えているところである」という説明があっただけで交渉にならず、組合は早く具体的なものを示すように求めました。また、賞与についても今回は交渉はまったくできず、これからの団交で話し合いをしていくことになりました。

 最後に、二つのことを法人側に求めました。一つは、新学部の設置にかかわる配置転換においては、本人の意思を確認するのかどうか明らかにしてほしいということです。松村労務担当理事は、これは学長、専務理事の担当なので、次回までに確認して返事をするという回答をしました。もう一つは、タイムレコーダーを薬学キャンパス同様に外国語学部棟にも設置してほしいということです。これに対しては、法人側は前向きで検討する旨約束しました。

 以上が今回の団交内容です。今回、特に重要なのは、河島学長、中川専務が出席し、新学部の設立に関して、教員、組合の意見を取り入れる気はまったくないという態度を改めて示したことです。特に、カリキュラムについては、これからでも、いくらでも修正可能なのに、それはしないとはっきりと言明しました。新学部でのかなりの授業は現在の教員が担当するのにまったくの秘密裏でカリキュラムを作成し、教員の少ない夏休みに抜き打ちで公表をし、教員に欠陥を指摘されると、修正はしないと居直るというのはいったいどういうことなのでしょうか。なぜここまで教員、組合の意見に耳を傾けようとしないのか、なぜ少しでも魅力的なカリキュラムを作ろうとしないのか――不可解としか言いようがありません。

 理事会はかねがね、理事会、学長主導で大学運営を行う旨、言明しています。しかし、そのことと教員の知恵を生かすということとは決して矛盾しないはずです。リーダーシップの発揮とは、現場の教員の経験や見識の無視ではありません。「民の声」を生かさずして真のリーダーシップはありえません。





解雇は合理的理由がなければ無効:労働基準法改正



 法人側は新学部の設立により、「やめてもらうことになる教員」が出てくると公言しています。5月に設立された「薬学部刷新準備委員会」、「新学部設置準備委員会」の規程においては、委員会では「(教員の)身分の得喪」に関する事項も扱う、として、まったく一方的に委員会の一存で教員の解雇が可能であるかのようになっていますが、解雇というのは、そのような簡単なものではありませんし、理事会の都合でいつでも自由にやれるというものでもありません。労働基準法を遵守しなければなりません。

 解雇については、これまでも正当な理由がなければ無効でしたが、それが、今年度の労働基準法の改正により、明文化され、次のような条項が労働基準法に加わりました。



第18条の2 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。



 ここにきわめて明快に規定されているように、経営者は、「客観的に合理的な理由」を提示し、「社会通念上相当である」と認められなければ、解雇を行うことは違法行為となるのです。

 特に、今回の新学部の設立に関する解雇は団交でも法人側が認めているとおり「整理解雇」にあたり、この整理解雇については、さらに厳しい要件を満たさなければ経営者は解雇を行うことができません。それは、一般に「整理解雇の4要件」として社会的に広く定着したものです。

整理解雇にあたっては、以下の四つの要件のいずれが欠けても、経営者の解雇権の濫用となり、解雇が無効となります。つまり、すべての要件を満たさなければなりません。

整理解雇の4要件

1.人員整理の必要性

余剰人員の整理解雇を行うには、相当の経営上の必要性が認められなければならない。

2.解雇回避努力義務の履行

期間の定めのない雇用契約においては、解雇は最後の選択手段であることを要求される。役員報酬の削減、新規採用の抑制、希望退職者の募集、配置転換、出向等によって、整理解雇を回避するための相当の経営努力がなされ、整理解雇に着手することがやむを得ないと判断される必要がある。

3.手続の妥当性

整理解雇に当たって、手続の妥当性が非常に重視されている。労働組合と十分協議を行ったかどうかも重視される。関係する情報を開示しているかどうかも重要である。必要な説明・協議、納得を得るための手順を踏んでいない整理解雇は、他の要件を満たす場合であっても無効とされる。

4.被解雇者選定の合理性

まず人選基準が合理的であり、あわせて、具体的人選も合理的かつ公平でなければならない。

 以上の要件がすべて整ってはじめて整理解雇は認められます。この整理解雇の4要件に照らせば、現在法人理事会が新学部設置に伴って行おうとしている解雇はまったく無効となることは自明です。もし、それでも法人理事会があえて違法を承知で確信犯として行うとなれば、組合も全面的に戦うことになります。 



平成15年8月12日に、北元理事長に対し、内容証明、配達証明付で、教員の組合員名簿を送付しました。