北陸大学教職員組合ニュース第184号(2002.11.1発行)

 

 

なぜ理事会は鴨野氏に会わなかったのか――不可解な学長選考過程

 

 新しい学長が1024日に開かれた理事会で決まり、河島現学長が再任された。教員による投票では、鴨野幸雄氏64票、河島進氏53票、白票8であった。しかし、理事会は、過半数を制した鴨野氏に会うということを一切せず、河島氏を選んだ。この逆転がなぜ起こったのか、理事会はいまだに教員に説明をしていない。

 今回、鴨野氏が多数の教員の支持を受けたのは、さまざまな要因があるだろう。単に河島学長に対する批判として投票したという者もあろう。しかし、鴨野氏にこれだけの票があつまったのは、何と言っても現状を変えたいという強い思いがあったからではないか。昨今の愚劣極まりない教員評価導入案およびその賞与への反映案、そして法・外におけるアドバイザー制度の改悪など、今、北陸大学には、かつてない閉塞感が広がっている。事態を打開するには、河島氏ではどうしようもないと考えた教員は多数いたにちがいない。

さらに、鴨野氏のこれまでの業績から、北陸大学が発展していくために多くを期待できると考えた教員も多かったからではないか。氏は、単に金沢大学法学部の学部長を2期つとめた、法学会の重鎮というだけではない。大学基準協会の委員でもあり、地元では多くの委員会の委員をつとめており、その学識を日本の大学全体の発展のために、そして地方の発展のためにも生かしておられる。稀有の人材と言っていい。このような方が北陸大学の学長となれば、様々な可能性が見えてきたはずである。そこにはロースクール構想も含めた法学部の立て直しもある。外語とても、鴨野氏のような地元の信頼の厚い方が学長となれば、ちがった展望が開けてきただろう。そのようなことを考えた投票者は多かったことと思う。

 しかし、鴨野学長は誕生しなかった。鴨野氏に会うことすら理事会はしなかった。なぜなのか。

だいたいが、教員による選挙後、理事会の正式発表にいたるまで、一日という時間すらなかったことが不思議である。教員による選挙が終わり、結果が判明したのは1023日午後3時ごろである。そして、翌24日、朝9時には理事会を開き、ただちに河島氏を学長とすることを決定している。その理事会の席に河島氏の姿はあったが、鴨野氏はいなかった。つまり、理事会は、過半数の教員が支持した候補者をまったく論外視して、河島氏の次期学長就任を決定したのである。ふつうに考えれば、選挙で一位となったものが、当然、その地位につく。しかるにそうはならなかった。それなら、そのことの説明があるというのが理の当然というものだろう。理事会はなぜ鴨野氏でなく河島氏を選んだのか?すべては闇の中である。

 今回の件で、さらに問題なのは、理事会が、二人の候補者のうち、北陸大学の学長として本当にどちらがふさわしいのか、真剣に検討したふしがまったくないことである。もし、本気で選考を行おうというのなら、過半数の教員票を獲得している鴨野氏と会うのが当然だろう。真に北陸大学の学長としてふさわしいのかどうか、理事会はその目で確かめるべきであろう。現に、中川専務理事は鴨野氏に北陸大学に出てきて話をしてほしいという旨の発言を学長候補推薦委員会の席上したと聞いている。過半数を制したとなれば会うのが当然である。しかし、それすらしなかった。いや、最初からする気がなかったとしか考えようがない。だからこそ、教員による選挙が終わってから24時間もたたないうちに河島氏を選考したのだろう。理事会の思惑どおりに事はすすんだのだ。

 理事会は、してやったり、と思っているかもしれない。しかし、本当にそれでいいのか。

北元喜朗氏が理事長になってからの北陸大学理事会の歴史は、教員蹂躙の歴史であった。学長選考規程をめぐっての裁判、衛藤氏の問題、名誉教授の問題、そして、記憶に新しい初谷氏の件、すべてこれは教員の意見を蹂躙しようとした北元喜朗理事長ひきいる理事会に端を発する。次から次へと「経営権」なるものを乱用して教員の意思を――場合によっては学生の思いすら――踏みにじってきたやり方に、教員側はいかに意欲をそがれたことだろう。この間、特に外国語学部や法学部では、本来なら学部を支えていくべき有能な教員がどんどん他大学へと転出していった。こういうことが北陸大学全体の力をいかに低下させたことか、想像するまでもない。

 理事会の役割は経営である。経営者の能力の一つは、働く者の意欲を高め、その能力が最大限に発揮されるような環境を作り、組織全体の力を高めていくことだろう。そういう観点からすれば、現在の理事会は最低の経営者である。教員がやる気をなくすにはどうすればいいか――それだけを考えて現理事会は大学運営を考えてるとしか思えない。

 理事会は、今回の選挙でなぜ4年間もつとめた現職の河島学長が4割しか取れなかったのか、謙虚に反省しなければならない。北元理事長得意の衆愚政治論などでお茶を濁そうというのなら、それこそ、北陸大学に未来はない。

 理事会は、今回の学長選考過程について、教員に説明をする義務がある。

(以上)