北陸大学教職員組合ニュース第156(2000.7.3発行)
「理解」するために知りたい説明を求めるのは不当なことか?
問題の所在を逸らさずに説明責任を果たすべきである
最近の言葉に「説明責任」というのがある。日米貿易摩擦が問題になった頃から流通し始めたように記憶している。これは社会が不透明になるにつれてますます重要なキーワードとなってきている。北陸大学の今期のボーナス減額(対前年比)と人事考課強化に関しては、北元理事長以下経営者は一方的に教職員の「理解」を強いるだけで、自らの説明責任を果たそうとしていないばかりか、ボーナス支給遅延の責任を教職員組合に転嫁しようとさえしている。むしろ、そのことによって問題の所在を逸らして、ボーナス減額と人事考課強化を既成事実化しようとしている。
問題の所在を改めて確認したい。今回の問題は今期のボーナス減額と人事考課強化が妥当なものであるかどうかということである。いうまでもなくそれを巡って労使交渉が存在する。ところが理事会は団体交渉において、最初から数字の交渉はおろか、組合側の求める経理上の具体的な説明に対して「団交の場で明らかにすることではない」の一点張りできちんと回答しようとしてこなかった。人事考課に関しても、昨年末の方式を安易に強化するばかりで交渉によって解決する観点がない。ボーナス支給遅延の事態はそこから派生したものにすぎない。
必要な情報が交渉の前提である
確かに経営者側は今期のボーナス減額について管理本部長名と松村労務担当理事の名前で2回減額の理由を説明している。即ち、「それは5年間で入学定員が80名減」(6月23日付け)になることと「4000名を数えた在学正数が2700名規模となります。これは20億円余りもの収入減を意味し、予算規模では3分の2に縮小することになります。」(6月29日付け)という説明である。組合に対しては、その他に、今年の学生総数は対前年比で200名余マイナスになったと説明している。数値が合っているかどうかはともかくとして、しかし、これらはあくまで一般的な状況説明にすぎない。人事考課に至っては組合の不信を払拭する努力を放棄し、交渉中ということを口実にしてその間にむしろ強化しようとしている。
我々が知りたいのは現実にどれだけ収入減になり、その分ををどのようにやりくりし、つまりどのように経営努力した結果、総額3400万円(組合算出)のボーナス減額になったかということである。つまり、具体的なプロセスである。このプロセスが明らかになれば、場合によっては0.3ヶ月減という数字は交渉の余地があるのではないかということにもなるだろうし、よくこの程度に押さえたということにもなる。これが交渉である。このプロセスから、我々は経営者がどういう努力をしているか、経営責任を果たしているかどうか、経営者を信頼できるかどうが判断できる。一方で最高経営者の世間の常識を越えた高額の給与問題については、それが大学のイメージや経営にかなりのダメージになりかねないにも関わらず、相変わらず説明を拒否している。困難な時代にあって、全体のバランスや志気を考えれば、せめて、求められた説明に答えるのが組織を預かる経営者のモラルというものだろう。人事考課が信頼を得るためにもこのようなことがクリアされなければならない。
一般組合員は好き好んで団交に参加したのではない
しかし、今回の労使交渉経過を見ると、理事会は最初から減額の数字を詰める努力を予定していない、あるいは組合との交渉を形だけのものとしか考えていないと思わざるを得ない。それは団交の日程にもよく現れている。組合が5月から団交を要求していたにもかかわらず、交渉開始を6月まで持ち越し、しかも交渉に必要な時間を最初から取ろうとしていなかったのである。交渉に必要な情報の提供も拒んでいる。当然一般組合員は執行委員の説明だけでは納得できない。だからこそ、多数組合員は交渉そのものを直接自分の目で確かめたかったのである。ことの本質は労働法上の問題ではない。誰もが納得できる交渉が行われているのかどうか、誰に対してであれ、理事会が理解を得られるだけの説明ができるのかどうかが問題なのである。一般組合員は好き好んで交渉に出向いたわけではない。責任ある交渉がなされていればその必要はない。団交は非公開だという形式上の主張は残念ながら積極的に理解を求めるだけの内容がないことの証でしかない。松村理事が説明するような一般的状況は確かに誰も否定できない現実だ。それだけに、冷静な交渉が必要である。逆に、プロセスの説明がなく言葉による一般的な状況説明だけで物事が決定されたのでは危険極まりない。多言を弄するまでもないが、責任ある交渉こそが問題を解決する。こんなことが繰り返されるのでは交渉も解決も存在し得なくなる。
責任ある説明が問題解決の第一歩である
我々は理解できない一方的なボーナス減や人事考課強化ではなく、交渉の場で相互に問題点を検討しながら解決することを望んでいる。ところが経営者側は交渉を交渉と考えず、最初からそれに必要な時間をとらず、教職員が求める説明なしでボーナス減額と人事考課強化をそのまま押し通そうとしている。そして、気づいてか気づかずか、支給遅延の責任を組合員に転嫁し、提示額を既成事実であるかのように通知し、問題を組合員の態度へと逸らそうとしている。松村理事の説明を待つまでもなく、我々は今後の厳しい状況を思えばこそ、今まで以上に冷静な交渉を望む。どうしてもボーナス減と人事考課強化が避けられないものであれば、一般状況の説明だけでなく、具体的なプロセスとマイナス面を理事を含めてどのように分担し合うのかを労使交渉の場できちんと説明することを求める。そのことによって初めて交渉は進展するはずだ。
5周年記念講演
組合結成五周年記念を以下の要領で行いたいと思います。
詳細は後ほどお知らせいたします。
日時 7月15日 17時より KKRホテル金沢(旧会館加賀)
記念講演講師 伍賀 一道氏(金沢大学経済学部教授,本学非常勤講師)
講演後,パーティーを予定しています。